生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年10月31日
 
 

文化芸術と生涯学習 (ぶんかげいじゅつとしょうがいがくしゅう)

キーワード : 文化活動、生涯学習・社会教育行政、文化行政、音楽活動、音楽振興法
永島茜(ながしまあかね)
1.文化芸術と生涯学習をめぐる枠組み
  
 
 
 
   文化芸術活動は、生涯学習政策の対象となる分野として大きな位置を占めている。それと同時に文化芸術の振興は、文化政策の対象領域でもあり、両者には互いに関連する部分が多く存在している。
その背景には、「生涯学習の推進」という目的を有する生涯学習政策と、「文化芸術の振興」を目的とする文化政策を所轄する行政部局が異なることが一要因として考えられる。
 現在、国レベルでは、生涯学習政策は文部科学省生涯学習政策局が、文化政策は主に文化庁が管轄しており、地方自治体レベルでは、前者は教育委員会、後者はその自治体によって、教育委員会或いは首長部局が担っている。
 生涯学習政策が、教育・学習活動それ自体を推進することが目的とされているのに対し、文化芸術活動にあっては、活動の結果、或いは活動を通して学習が行われるため、学習することが目的とはならない。しかし、実際に行政による事業やサービスを享受する利用者の側からみれば、生涯学習活動と文化芸術活動の両者は区別されず同様のもの、ないしは密接に絡み合っているものとして捉えられているものと考えられる。
 戦後の生涯学習・社会教育行政と文化行政の歴史的変遷を概観すると、生涯学習・社会教育行政は、昭和20(1945)年の社会教育局の発足より、昭和63(1988)年生涯学習局、平成12(2000)年生涯学習政策局と名称は変化しているものの、生涯学習・社会教育行政として一貫している。他方、文化行政に関しては、社会教育局発足時から局内に設置された芸術課で行われ、昭和41(1966)年文化局、昭和43(1968)年からは文化庁へと引き継がれている。
 生涯学習活動を推進する法的基盤は、社会教育法、図書館法、博物館法、生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律(生涯学習振興法)などが挙げられ、文化芸術活動を推進するものとしては、音楽文化の振興のための学習環境の整備等に関する法律、文化芸術振興基本法などがある。
 自治体レベルでは、1970年代後半からの「文化の時代」「地方の時代」の提唱にみるように、行政課題として文化振興が浮上してくると、文化行政への関心が高まり、文化活動を従来管轄してきた教育委員会から切り離し、首長部局において管轄する傾向にある。
文化担当課が首長部局に設置される例は、1980年代から急激に増加し、現在ではおよそ44県に設置されている。従って文化関係の事務は教育委員会と首長部局に別れている県のほうが多く、それぞれ文化振興条例や文化振興指針などを策定している。
 
 
 
  参考文献
・枝川明敬『新時代の文化振興論―地域活動と文化施設を考える―』小学館スクウェア、2001年。
・枝川明敬『文化芸術の政策・経営論』小学館スクェア、2004年。
・岡本薫『新訂 入門・生涯学習政策』全日本社会教育連合会、2004年。
・根木昭『日本の文化政策―「文化政策学」の構築に向けて―』勁草書房、2001年。
・枝川明敬、垣内恵美子、笹井弘益、根木昭『文化会館通論』晃洋書房、1997年。
 
 
 
 
  



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