生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年12月31日
 
 

成人の健康学習 (せいじんのけんこうがくしゅう)

health learning for adult
キーワード : 自己管理学習、セルフナーシング、ヘルスプロモーション、オタワ憲章、健康リテラシー
今西幸蔵(いまにしこうぞう)
1.生涯にわたる健康学習
  
 
 
 
  【定義】
 成人の健康学習という場合、成人が健康に関わる各種の知識やスキルの習得といった健康リテラシーの獲得をめざした学習活動を進めることを目的として、学習者が自分自身の健康の確立を図る自己学習を行い、それを社会全体において支援する機能をいう。
【説明・動向】
 今日の健康学習においては、「セルフマネジメント」の考え方を採用することが提唱されている。個人が自己能力の開発に取り組むだけでなく、多様な能力を持った人々がチームを形成して能力の向上を図ることが重要とされ、社会全体への学習成果の寄与が期待されている。生涯学習支援という視点から、健康づくりへの自助、共助、公助といった実践活動を環境醸成することに関連する。そこで「ヘルスプロモーション」という理念が示され、この考え方をもとに、健康生活のための知識とスキルの向上をめざした事業が各地で実施されている。
 「健康領域におけるエンパワメント」に関する研究について、黒江ゆり子氏らは、2002年頃から急激に増加し、その内容も地域づくりや住民への支援プログラムに関するもの、精神障がい者を対象とした支援方法やカウンセリングに関するもの、糖尿病やネフローゼ症候群など慢性病を持つ人々を対象としたものなど多様化しているという。
 近年、医療におけるインフォームドコンセントやインフォームドチョイスの概念が示され、セカンドオピニオンの重要性が指摘されている。患者は医師から複数の治療方法を提示され、それを選択し、治療方法を自己決定することになる。医療看護を直ぐに必要とする患者だけでなく、生活習慣病を身近なものとして捉えている大勢の人々や、健康に関心の高い人々にとっての生涯にわたる健康学習を促進させるために、成人教育・生涯学習における「セルフマネジメント」の考え方を援用することが新しい課題だと指摘されるようになっている。
 健康学習におけるセルフマネジメントとは、患者や健康に関心の高い人が、自分の病気の治療や予防に向けて健康に関わる知識やスキルを有することであり、自分自身の生活の中に取り入れることによって身体の症状や体調の改善を図ろうとする自発的な意識と行動であるとされる。
 生涯にわたる健康学習を考える際のキーワードに、「ヘルスプロモーション」がある。ヘルスプロモーションの概念については、「すべての人々に健康を」実現することを目的として、WHOによって開催された第1回ヘルスプロモーション国際会議宣言、いわゆるオタワ憲章(Ottawa Charter for Health Promotion)が示している。
 わが国においては、ヘルスプロモーションは健康に関わる公共政策原理とされる。コミュニティ活動によって成果を上げられるものであると考えられており、健康についての情報提供や教育サービスの提供によってスキルを高め、個人や社会の発展の寄与に関連するとされている。
 
 
 
  参考文献
・『成人看護学 セルフマネジメント』(メディカ出版、2005年)
・安酸史子編著『糖尿病合併症ナーシング』(医歯薬出版、2005年)
 
 
 
 
  



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