生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2009(平成21)年9月6日
 
 

研究課題・今後の生涯学習政策の方向と課題 (けんきゅうかだい・こんごのしょうがいがくしゅうせいさくのほうこうとかだい)

future direction and tasks of lifelong learning policy in the new era
キーワード : 知識社会、少子高齢社会、イノベーション、職業教育、生涯学習支援システム
浅井経子(あさいきょうこ)
1.新しい時代と生涯学習政策
  
 
 
 
   21世紀に入り、我が国のみならず世界は、過去に経験したことがないような変化の時代を迎えており、そのような時代にあっては近未来からの発想が必要であるように思われる。そこで、今後、社会に大きな変化をもたらすと考えられるグローバル化と少子高齢化に焦点を当て、それらとの関わりで新しい時代の生涯学習政策の課題について考えてみよう。
 グローバル化は世界的な規模での競争を激化させ、また少子高齢化の進行は今後の我が国や地域社会の在り方や個人の生き方の再考を迫っていると考えられる。
 それらへの対応にはいろいろあろうが、ここではグローバル化については「知識社会への対応」を、少子高齢化については「新しい地域づくり」をあげ、それらを“これからの社会の要請”とした。もちろん、「知識社会への対応」やグローバル化の進展の背後には高度情報化の要因があることはいうまでもない。また、これらの「知識社会への対応」と「新しい地域づくり」の二つの要請には重なる部分があるように思われる。例えば、地域づくりのためには「地域経済の活性化」は不可欠で、それは知識社会に対応した地域づくりを進めることで可能になると考えられる。
 それでは、これからの社会の要請と生涯学習政策との関係であるが、社会の要請が生涯学習政策に影響を与える一方で、生涯学習政策が「知識社会」や「新しい地域」の形成に寄与するといった関係もあるであろう。生涯学習政策についていえば、生涯学習支援・推進領域の政策の一部に社会教育領域の政策があり、これまでどちらかといえば「知識社会への対応」に関する政策は社会教育以外の生涯学習支援・推進領域で取り組み、「新しい地域づくり」に関する政策は社会教育領域で取り組んできた。その傾向は今後も続くと思われるが、これからはそれだけでは済まされないようにも思われる。
 これまで述べてきた社会の変化をもたらす要因、社会の要請、生涯学習政策等の関係を表したものが図1(添付資料)である。一番下にこれからの社会を変動させる要因としてのグローバル化と少子高齢化があり、それらの要因がもたらす問題に対処するための社会の要請が楕円形で示してある。
 図1では、要因間の関係は矢印で示したが、これからの社会の要請と生涯学習政策の間は双方向の矢印となっている。上述したように、社会の要請が生涯学習政策に影響を与えるとともに、生涯学習政策が知識社会や地域の形成に寄与するからである。
 それでは、グローバル化と少子高齢化がもたらす問題とそれへの対応について、もう少し詳しく考えてみることにしよう。
 添付資料:図1 新しい時代と生涯学習政策の関係
 
 
 
  参考文献
・浅井経子「新しい時代の生涯学習政策の方向と課題」日本生涯教育学会年報29号、平成20年11月。
・浅井経子「自立して『生きる』道を開く学習支援システムの構築」『マナビィ』平成20年2月号。
・2005年のデータは総務省『国勢調査』、2025年以降のデータは国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口(平成18年12月推計)』(内閣府『平成20年版高齢社会白書』、4頁)
・P.F.ドラッカー(上田惇生他訳)『ポスト資本主義社会』ダイヤモンド社。
 
 
 
 
  



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