生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2016(平成28)年1月24日
 
 

生涯学習/教育と日本語学習/教育 (しょうがいがくしゅう/きょういくとにほんごがくしゅう/きょういく)

lifelong learning / education and japanese language learning / education
キーワード : 日本語教育、外国人、対話、学びの場、生涯学習支援
山内薫(やまうちかおり)
1.日本語教育と日本語学習者
  
 
 
 
   日本語教育とは、一般に日本語を第一言語としない者を対象に日本語を教育することである。日本語学習者は、生活者、年少者、日系人子弟、社会人、留学生等、多様である。同様に、日本語教育が行われている現場も、日本国内、及び海外の初等中等教育機関、高等教育機関、語学学校、地域の教室、企業等、多様である。
 日本国内における主要な日本語学習者は、日本で生活する外国人である。法務省の調査によれば、2014年末現在、2,121,831名の外国人が日本に在留している。在日外国人は、来日の時期により、オールドカマーとニューカマーに分けられる。オールドカマーとは、特別永住者の資格を持つ者である。具体的には、第2次世界大戦以前から日本に在留している朝鮮半島出身者、中国・台湾出身者、及び彼らの子孫である。これに対し、ニューカマーとは、1980年代以降に来日し、長期滞在する外国人を指す。具体的には、就労者、日本人の配偶者、留学生(大学、専門学校、日本語学校等に在籍する学生)、技能実習生、EPA(経済連携協定)による看護師・介護福祉士候補者、在留外国人が扶養する配偶者・子等である。日本で生活する外国人が日本語を学習する主な目的として、日本での生活を円滑にするため、各職業や活動領域で必要とされる知識を得るため等が挙げられる。
 日本語教育は、日本国内のみならず、海外でも行われている。国際交流基金(2013)が2012年度に行った調査によれば、海外に3,985,669名の日本語学習者がいる。本調査では、「独習している学習者は総数には含まれない」(p.7)。そのため、潜在的には399万人以上の海外在住日本語学習者がいると推測される。海外における日本語教育は常時拡大傾向にある。過去33年間で日本語教育機関数は14倍、日本語教師数は15.6倍、日本語学習者数は31.3倍(p.8)といずれも増加している。また、日本語を学ぶ目的は、「日本語そのものへの興味」(62.2%)、「日本語でのコミュニケーション」(55.5%)、「マンガ・アニメ・J-POP等が好きだから」(54.0%)等の日本語や日本文化への関心が、「将来の就職」(42.3%)や「今の仕事で必要」(18.4%)あるいは「日本への留学」(34.0%)といった生活や実務に関するものを上回っている(p.9)。
 日本国内、海外を問わず行われている日本語教育として、継承語としての日本語教育がある。「親から子どもに伝えることば」(中島2001、p.216)としての継承語教育は、国際結婚による家族が母語・母文化の価値を繋いでいくことを目的とする。先に挙げた国際交流基金の調査によれば、「母語または継承語」(11.3%)もまた、日本語を学ぶ目的として挙げられている(p.9)。
 以上のような日本語学習者のカテゴリーは多岐に及ぶという状況ゆえに、日本語教育には、個々の学習者にラベルを付し、付したラベルをカテゴライズすることにより多種多様な学習者集団が作り出され、多様な学習集団が出来上がるたびに、その学習集団に対応するかたちでの教育理念や実践が構想されるという循環が見られる。その結果、学習者集団内における多様性が等閑視される傾向がある。このような傾向を避けるためには、「日本語学習者への生涯学習支援」という視点に基づく、日本語教育実践を構想する必要がある。
 
 
 
  参考文献
・独立行政法人国際交流基金『海外の日本語教育の現状―2012年度日本語教育機関調査より―』くろしお出版、2013.
・中島和子『バイリンガル教育の方法〈増補改訂版〉―12歳までに親と教師ができること―』アルク、2001.
・法務省『平成26年末現在における在留外国人数について(確定値)』法務省報道発表資料、平成27年3月20日、
・http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri04_00050.html(参照日:2015年12月30日).
 
 
 
 
  



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