登録/更新年月日:2011(平成23)年3月6日 |
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では、各国レベルでは、どうなっているのか。筆者が少なくとも他国よりは事情がわかるイギリス連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)を今回採り上げることにしたい。 欧州委員会の「生涯学習プログラム」は、イギリス連合王国ではブリティッシュ・カウンシルと大手調査会社であるEcorys UK (旧 ECOTEC) とが共同で運営している。とはいえ、イギリスの教育(生涯学習)政策上の全てを包括するものでない。あくまでもEUの補助金事業という位置づけである 。 さて、「生涯学習(lifelong learning)」という言葉が、イギリス連合王国で政策用語として前面に出るのは、1997年ブレア労働党政権になってからである。いや、それまで「生涯教育」(lifelong education)をキーワードにした国による政策推進もなかったと言える。 「生涯学習」を前面に出した政策は、1998年の緑書『学習する時代』(Green Paper The Learning Age)で提示された。同緑書には、当時教育雇用大臣であったデイヴィッド・ブランケット(David Blunkett)の巻頭言を含め、「生涯学習」が政策推進のキーワードとして多数登場している。そして、その第4章には、欧州委員会の影響が明記されている。 この緑書『学習する時代』で示された政策方針は、イギリス連合王国を構成する4地域(Four Nations)であるイングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドに基本的に適用されることとなった。 ところが、連邦国家であるイギリス連合王国では、教育・訓練に関して自治の度合いが大きい。 ウェールズが、政策として最も前面に出しているといえる。自治行政府であるウェールズ議会行政府における所管省庁が、児童・教育・生涯学習・スキル省(Department for Children, Education, Lifelong Learning and Skills)となっている。そこでの「生涯学習」の政策的焦点は、基本的にスキル形成となっている。 スコットランド自治政府も、その教育・訓練政策上のトピック8つの一つとして「生涯学習」(Lifelong learning)を挙げている。 一方、イングランドにおいては、「生涯学習」(lifelong learning)の名の下の政策が見出しがたい。イングランドでは年齢層を限定した教育訓練施策がほとんどであって、生涯学習という文言のもとでの政策推進が、実はやりにくい。そのうえ、欧州委員会が提唱することに簡単には乗りにくい事情もある。イングランドにおける中央行政は、ロンドンの中央政府が直接管轄する。したがって、国家主権とEUとの折り合いに腐心して政策を打ち出す必要があるのである。 北アイルランドでは、1999年に『生涯学習:全ての人のための新たな生涯文化』(Lifelong Learning: A New Lifelong Culture for All)という名の政策文書が公になった。とはいえ、「生涯学習」が、前面に出ていない状況となっている。北アイルランドにおける教育行政は、現在イングランドとの相違が一番少ないとされる。 対照的に、ウェールズとスコットランドの自治政府は、ロンドンの中央政府との独自性を出すのに、EUの方針を取り込む傾向が大きくなっている。生涯学習に関する政策にもそのことが当てはまると言えよう。 br> |
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参考文献 ・The Learning Age: A Renaissance for a New Britain. Cm 3790. London: The Stationery Office, 1998. ・Lifelong Learning: A New Lifelong Culture for All. [Belfast]: HMSO, 1999. |
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