生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2009(平成21)年9月9日
 
 

児童に対する図書館サービス (じどうにたいするとしょかんさーびす)

public library service to children
キーワード : 児童サービス、児童、子ども、公共図書館
孫誌衒(そんじひょん)
2.児童に対する図書館サービスの歴史
 
 
 
 
   日本で初めて児童サービスが行われたのは、明治20(1887)年東京神田に開設された大日本教育会附属書籍館小学部の児童図書館が設けられてからである。明治35(1902)年に開設された私立大橋図書館でも、子どもの利用者を受け入れていた。しかし、これらはいずれも有料で、学校長の許可証が必要であるなど制約があった。
 公共図書館では、明治36(1903)年に開館した山口県立図書館が児童閲覧席を設け、児童サービスを行ったのが始まりである。明治期、大正期には一部の図書館で児童室が設けられ、児童のための活動が展開された。しかし、昭和6(1931)年の満州事変から第2次世界大戦へ進むにつれ、多くの図書館では戦災による施設の崩壊や経営難により、他のサービスより先に児童サービスが縮小・停止されていった。
 戦後は、昭和45(1970)年には、『市民の図書館』(日本図書館協会、1970)において「当面の最重点目標」の一つとして児童サービスが挙げられ、その具体的な内容が明示された。これをきっかけに児童サービスの必要性が認識されるようになり、全国の公共図書館における児童室(コーナー)の設置率も大幅に増加した。
 昭和49(1974)年には、児童サービスを目的とする独立した図書館として、「東京子ども図書館」が発足した。1950・60年代に始まる4つの家庭文庫を母体とするこの私立図書館は、日本ではじめての児童図書館である。同年に設立された伊藤忠財団は、当初より子ども文庫助成事業を行い(平成20(2008)年度までに約8億5千万円)、児童サービスの確立、発展を支えた。昭和56(1981)年には、公共図書館の児童室設置率ははじめて8割を超え、公共図書館における児童サービスが定着していった。その後、80年代に乳幼児サービス、ヤングアダルトサービス、障害児サービス、多文化サービスなどの展開がみられ、子どもの発達段階や多様性に応じた児童サービスへと発展していった。平成12(2000)年には、「国際子ども図書館」が日本で初めての国立児童図書館として開館した。日本内外の児童書およびその研究に関わる文献の収集・保存・提供をはじめとしたサービスはもちろん、アジアの児童図書を収集して国際的な役割も果たしている。
 
 
 
  参考文献
・児童図書館研究会編『児童図書館のあゆみ−児童図書館研究会50年史』教育史料出版会、2004
・汐崎 順子『児童サービスの歴史;戦後日本の公立図書館における児童サービスの発展』創元社、2007
 
 
 
 
 



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