登録/更新年月日:2012(平成24)年12月11日 |
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【定義】 日本的経営とは、戦後の日本の高度経済成長を前にして、1950年代から60年代前半にかけて日本企業の競争力の源泉として国際的にも議論されてきた経営手法である。J・アベグレンは、戦後の日本企業の発展の源泉が終身雇用、年功序列、企業別労働組合にあるとみてこれを日本的経営と言及した。これが後に「日本的経営の3種の神器」として広く認知されることになった。その後、OECDの「対日労働報告書」によって日本的経営という概念が確立された。しかし、厳密な意味での終身雇用は日本企業には現在も存在しておらず、アベグレンも終身保証などと訳す方が適切であると述べている。 日本的経営が国際的に注目されたのは1950年代以降であるが、日本的経営の指標とされる終身雇用や年功序列、企業別労働組合は、第1次大戦後の大正時代を経て昭和初期に主に重工業大企業のもとで形成されたとされる。その日本的経営の本質的内容は、若年労働者、女子労働者、不安定雇用労働者、下請制企業労働者などの低賃金労働者を制度的に最大限利用することにあり、その制度は第1次大戦後から1930年代にかけて順次確立されたとされる。また、日本的経営は全従業員に適用されるのではなく、主に大企業・男子・正規雇用職員に適用されるというのが一般的な見解である。 【説明・動向】 しかし、1980年代の高度経済成長の終焉や1990年代のバブル経済崩壊後あたりから、リストラ・派遣労働など雇用の流動化が進展し、長期雇用保証が大きく揺れ動き始めた。企業が福利厚生まで含めて労働者の生活を生涯にわたって保証し、その代償として労働者は企業に対し公私にわたって無制限の忠誠を尽くし生涯にわたり一つの企業に勤め上げ、その会社人生の中で結婚、子育て、マイホーム建築という画一されたライフプランを皆が全うするという人生モデルが一部のコア人材を除いて適用されなくなってきているのである。 このような変化を受けて日経連は『新時代の日本的経営』で、もはや従来の日本的経営が維持できないため労働者を3つのグループに分けることを提唱した。年功序列・終身雇用が適用される「長期蓄積能力活用型グループ」、有期雇用のスペシャリストとして活用する「高度専門能力活用型グループ」、景気の調整弁的役割を担うパートやフリーター等の「雇用柔軟型グループ」に分けるというものである。コア人材のみを長期蓄積能力活用型グループとして長期安定雇用し、他の2グループは短期雇用とすることで労働力の弾力化・流動化を進め、総人件費の節約を図ろうとするものである。 br> |
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参考文献 ・柴田高「日本的経営研究におけるアベグレン的解釈の影響と限界」『東京経大学会誌第252号』平成18(2006)年、5-6頁 ・山下高之『日本的経営の展開』法律文化社、平成4(1992)年、26頁、39頁 ・日本経営者団体連盟『新時代の「日本的経営」−挑戦すべき方向とその具体例−』平成7(1995)年 ・安部耕作「第13章 変貌する日本的経営とキャリアデザイン」『現代社会と経営』ニシダ出版、平成23(2011)年 |
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