登録/更新年月日:2007(平成19)年12月28日 |
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知的財産権は知的創作活動の経済的価値に重点を置いた考え方である。知的所有権は知的創作活動の権利所有関係に重点を置いた考え方で、両者は同一のものである。最近は知的財産権という概念を使うことの方が多い。知的財産権の定義は多様にあるが、一般的には「人間の知的創作活動の成果がもつ経済的価値を認めてつくられた特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、不正競争防止法などの法的環境」と考えられる。 知的財産権の保護とともに法的基盤の整備と教育が第二次大戦後に欧米諸国や日本などの先進工業国で注目されてきたのは、先進国相互の技術革新の激化だけでなく、多くの開発途上国などで廉価な労働力を生かして、知的財産法による保護規定を無視して類似製品をつくり、世界経済市場が無秩序におちいることが心配された結果だといわれる。このことは現代の産業社会が有形の物づくりの時代から、無形の知恵と創作活動の成果を競い合う時代に変化しつつあることを示唆している。 知的財産権は法的に知的財産を保護する国際条約、ベルヌ条約、パリ条約、万国著作権条約などによって国際的に保護されている。日本で知的財産権(Intellectual Property)という言葉が強く意識されたのは、世界的な中枢機関であるWIPOといわれる世界知的財産権機構(World Intellectual Propety Organization)に1975年に加盟してからである。このWIPOでは、知的財産権として、文芸、美術および学術の著作物、実演家の実演、レコード及び放送、人間の活動のすべてにわたる発明、科学的発見、意匠デザイン、商標、サービスマークおよび商号、不正競争に対する保護、産業、学術、芸術の分野における知的活動から生じるすべての権利を含むとしている。 生涯学習としての知的財産法などの法的環境についての教育は、知的財産権に関する諸条件を理解し、法的順守(コンプライアンス)する態度を育てるとともに、大学や研究機関のみならず地域の産業育成のための研究活動を育成して、知的財産を形成できる法的基盤を整備することである。知的財産法のなかでも発明、技術を保護する特許法は出願して20年保護、実用新案法は出願して10年保護、文芸、学術、美術、音楽などの著作権は50年保護、商標法は出願して10年保護と法律によって保護期間も法的条件も違っている。 現代はインターネットの普及に見られるように高度情報化時代によって、技術革新、イノべーションの成果を生かして、生涯学習の方法も多様化し、学びたい時には、いつでも、どこでも、学習者の条件、意欲によって選択可能になりつつある。また生涯学習などの教育・学習活動では著作権、著作隣接権などの権利条項が制限されることがある。たとえば個人的、家庭内での利用、図書館での利用、引用としての利用、学校教育など教育活動のための利用、視覚障害者のための点字訳、録音、聴覚障害者のための字幕など福祉のためなどについては、法律で許される範囲内で自由に利用できることを教育関係者や生涯学習者は知っておく必要がある。法的に必要な許諾や料金支払については誠実に対応し、法的に権利除外されて自由利用できる範囲はどこまで許容されるのかを知ることにより、生涯学習を豊かにするための法的環境を理解し、共生するしくみを考えていきたい。 br> |
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参考文献 ・荒船良男、大石治仁著「手にとるように知的財産がわかる本」かんき出版、2004 ・寒河江孝充著「知的所有権の知識」日本経済新聞社、1996 ・名和小太郎著「サイバースペースの著作権」中央公論社、1996 ・八代英輝著「日米著作権ビジネス」商事出版、2004 ・読売新聞東京本社「知財で稼ぐ」光文社新書、2004 |
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