登録/更新年月日:2007(平成19)年12月28日 |
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近未来の生涯学習課題を考えるときネットワーク化した電子環境であるサイバースペース(Cyber space)を活用したメディア・リテラシーとして、情報機器を自由に操作できるテクノロジーへの適応だけでなく、情報環境を取り巻く法的規制を理解して、社会生活を合法的に営み、豊かな人間形成を行うための情報倫理の生涯学習の必要性がある。これまで情報倫理は、インターネット社会における通信の自由と責任のなかでコンピュータ機器を取り扱うためのルールづくりと意識されてきたが、サイバースペース時代の情報倫理は児童期から高齢者まで憲法で保障された基本的人権を相互に守り、情報セキュリティの多様な問題から個人の言論思想の自由を保護する広い意味での民主主義社会のための人権教育のひとつと意識されている。e−learningなどの遠隔教育の方法としてインターネットなどのネットワーク社会形成が重視されると、サイバーテロというか個人情報の流失の誘因となるハッカーや、情報ウイルスの蔓延によるネットワークの破壊活動、著作権法違反となる情報資源の盗用や個人の不注意や盗難による情報流失による被害が増大しているのが問題となる。 また知的財産権の保護については、高度情報社会における国際的な産業間の貿易競争などの課題として、先進国間さらに多くの開発途上国においては、特許法、実用新案、著作権などの規定が違ったり、まだ制定されず法的な違反行為が黙認されているところも少なくない。1967年に設立された知的財産権の国際的な中枢機関であり、我が国が1975年に加盟したWIPOといわれる世界知的財産権機構(World Intellectual Property Organization)では、国際的な知的財産権に伴う紛争を調停するとともに、世界各国の加盟を要請しているが、まだ多くの課題を残している。 たとえば著作権法の日本と米国の公共的利用に関する除外規定を比較しても差異がある。日本は著作権法第30条で私的利用を認め、第31条で図書館等の複製、第33条で公表された著作物は出所を明示することで利用できる。第35条で学校教育など教育機関での利用、第37条で点字等の複製に関しては除外規定があるが、多様化した生涯学習や遠隔教育としてのe−learningの教材作成に適用されるか否かなど検討されるべき課題は多い。アメリカ合衆国著作権法においてはフェアーユース(Fair Uses)として批評、報道、教育、福祉などの公共利用について一括著作権除外事項としていることは望ましいが、個別ケースでは裁判の判例などが複雑で適応判断が難しい。 情報倫理の教育においては、これまでの中高等学校などの情報科の教育を拡充して、小学校から社会科、国語、道徳、理科など情報教育分野だけでなく幅広く情報に伴う基本的人権の保護と、ネットワーク時代の情報活用のルールづくりについて学ぶ必要がある、成人教育ではIT研修の場で情報倫理について基本的な考え方とルールを社会人として的確に学習する必要がある。サイバースペース時代における情報倫理の確立は、生涯学習の重要な課題であることは、今後ますます増大している。さらに今後の国際的な学問・技術・教育などの交流が期待されるアジア諸国では、知的財産権などの検討が始まったばかりであり、アメリカ、ヨーロッパ、日本などの先進諸国の経験が国連、ユネスコなど国際機関を通じて生かされることを期待したい。 br> |
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参考文献 ・文部科学省生涯学習政策局「情報ネットワーク社会における新しい展開」雑誌視聴覚教育Vol1890、2006 ・千野直邦、尾中豊子著「著作権法の解説」一橋出版、1989 ・池上淳著「情報社会の文化経済学」丸善出版、1995 ・八代英輝著「日米著作権ビジネス」商事出版、2004 |
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