生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年4月24日
 
 

コミュニタリアニズムと地域学習 (こみゅにたりあにずむとちいきがくしゅう)

communitarian theories and their perspectives on community learning
キーワード : コミュニタリアニズム、個人化、シチズンシップ、ボランティア活動
坂口緑(さかぐちみどり)
1.「個人化」のすすむ現代社会
  
 
 
 
   現代社会では、社会に共通する知識や感覚がその人の生き方や考え方を統制する力はますます弱まり、代わって各自がばらばらに、自分にとって意味のある情報が何かを個別に選択し、自らを常に問い返さなければならない「個人化(individualization)」が進行している。かつては、家族集団や、村落共同体のなかで、あるいは社会階級や集団の力を借りて克服することができた生活歴上の好機や危機、ジレンマを、人びとはますます自分自身でそれに気づき、解釈し、対処していかなければならない。親の世代や自分の帰属する村落共同体などの集団での規範が、自分にとってのお手本になりにくく、また、学校をはじめとする「教育」の体系において手に入れられる知識の果たす役割も、なくなりはしないものの限られたものとなる傾向にある。代わって、ひとりひとりが自らの生き方を学びながら選択していく必要に迫られる。生涯学習は、このような生き方の選択にも大きな影響を及ぼす活動を指す。
 ところが、自らの生き方を選択するのはそれほど容易ではない。多様な選択肢の間で、何がもっとも最適な選択かを決定する要因が見えにくくなり、すべてが「選好(preference)」に帰せられる困難と隣り合っている。アイスクリームのトッピングをイチゴ味にするかチョコレート味にするかという選択と、進学するか就職するかという選択とは次元が異なるにもかかわらず、個人化された社会ではその違いが見えにくくなる。「自分が好きに決めればいい」「他の人に迷惑をかけなければいい」という道徳律しか個人を縛るものがなくなり、その結果、さまざまな選択が容易に自分の好みの問題にすり替わってしまうからである。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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