生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

高大連携 (こうだいれんけい)

キーワード : 高等教育の大衆化、進路指導、補習授業、出張講義、入学前教育
住岡英毅(すみおかひでき)
3.課題と展望
  
 
 
 
   高大連携は、全国的にみても、まだ緒についたばかりである。高校側、大学側双方にとって、連携に向けたアイディアの創出と工夫がこれから益々重要になってくる。現状の課題を整理し将来を展望すると次のようになる。
 一つは、確かに、高大連携を通して、高校と大学との相互理解は一頃にくらべると随分進んできている。とは言え、仔細に眺めると、そうした相互理解も、大学からの情報発信と高校側の受容といった一方通行のなかで進んできている。もちろん、生徒の進路指導という目前の課題を抱える高校にとっては、そのこと自体が大きな成果ではある。また、高校生を自らの大学へ誘引したいと考える各大学サイドに立ってみると、入学者獲得という大学経営の戦略からみて、それは望ましいことではある。だが、若者の生涯にわたる学びの連続性をどう培うかという視点に立つとき、こうした現状に満足しているわけにはいかない。大学はもっと高校教育に関心を持つことが必要であり、高校教育に連動する大学教育のカリキュラムを開発すべきである。そうして初めて、高校と大学がそれぞれの独自性を発揮しながら若者の学びに貢献することができる。こうした教育内容面での連携が今最も手薄の部分であり、そこにチャレンジしていくことが、これからの高大連携をより実りの多いものにしていくことになる。
 二つは、これまでの高大連携は、どちらかと言えば、教育サーヴィスを提供する学校管理者相互および教員相互で展開されてきた。だが、若者の学びと成長という角度からこれを眺めるとき、生徒、学生といった教育の受益者相互の交流も重要な視点ではないかと思われる。古来から言われるように、若者同士の相互学習くらい人を成長させるものはない。そのなかで、「大学へのオリエンテーション」や「高校での勉学の構え」が、共有する若者の感性を媒介にして、大学生から高校生へと伝わっていくはずである。その点では、大学生の高校へのインターンシップ事業や高校生の一日大学生体験などは、全国的にみても数少ない貴重な事例である。これからの高大連携の展望は、このような学生参加の側面からも探っていく必要がある。
 三つは、これからの展望を考えるとき、高大連携を側面から支援する都道府県教育委員会の役割が注目される。県立高校を抱える都道府県教育委員会は、現状においても様々な支援を行っている。たとえば、都道府県教育委員会が大学と高大連携についての協定を結ぶケースが見られる。いわば高校と大学を結ぶコーディネーター役を教育委員会が引き受けているわけである。今後は、両者を単にひきあわせるだけでなく、連携の内容づくりにも援助の手を差し伸べることが望まれる。それは、高校教育の充実を高等教育との関連で図ろうとする、教育行政からの積極的なアプローチということができる。このようにして、高校、大学、地域の教育委員会の三者で創造する高大連携は、これからの高校教育と高等教育の行方に新たな展望を切り開くことになる。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。
<トップページへ戻る
 
       
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved.