生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

高大連携 (こうだいれんけい)

キーワード : 高等教育の大衆化、進路指導、補習授業、出張講義、入学前教育
住岡英毅(すみおかひでき)
2.連携の具体的内容
 
 
 
 
   連携の具体的な内容や方法は、多様かつ多彩である。中央教育審議会の答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」(平成11(1999)年12月16日)、及び各地の大学で取り組まれている高大連携の試みをもとに類型化して示すと、おおよそ次のようになる。
 まず、大学の教育活動を高校生に開放し、彼らに大学教育についてのイメージづくりや大学で学ぶことの意味についての認識を喚起することがあげられる。たとえば、夏季休暇中に高校生を対象にした集中講義を開設し、大学入学後に活用できるような単位認定を行う、また単位認定を行わないまでも高校生向け公開講座や衛星通信システム、インターネット回線などを利用した遠隔講義を通して、高校生に大学の幅広い教育機能を提供する、さらには大学教員が高校に出向いて出張講義を行う、などはその典型である。また、大学のこのような活動と高校教育を連動させて、大学で履修した単位を高校の単位として認定することもある。いずれにしても、こうした試みは、高校生にとっては大学教育への緩やかな適応を意味し、大学にとっては高校生を大学教育へといざなう先行投資的意味をもっている。
 次に、大学教育の実をあげるために行う、高校と大学との連携があげられる。たとえば、大学のアドミッションポリシー(入学者受入れ方針)にそって、生徒が進もうとする分野や大学の教育内容に応じた科目についての適切な履修ガイダンスを、高校側と大学側の話し合いを通して徹底させる、特別選抜による入学予定者の入学前教育を冬季休暇を利用して大学で行う、学生の履修歴に応じ、大学教育の基礎として足りない部分についての補習授業を高校側の協力も得て大学で実施する、などがこれである。こうした活動は、高校教育を大学教育へと連結させるための言わば「糊しろ」ともいうべきものであり、高校教育の多様化と高等教育の大衆化が一般的になった今日では、欠くことのできない重要性を帯びつつあると言ってよい。
 さらに、高校関係者と大学関係者の相互理解を目指すための連携があげられる。それは、高校の進路指導の充実を図る目的から派生して生まれてきた。たとえば、高校生の進路を的確に見出すためには、大学の入学者選抜制度の在り方や入試問題の適切性をめぐって、また高校の教育課程の改革や大学教育の改革状況等について、双方で情報を交換し相互理解を深めることが重要になってくる。そのため、都道府県単位で「高校と大学との連絡協議会」を設けて、年に一度の話し合いの機会をもっているところもある。また、教育委員会や高校からの依頼を受けて高大連携の研修会を企画したり、高校との連携による教学プログラムや入学前教育に関する研究会を開催している大学もある。高校教育や大学教育の充実を目指す高大連携の気運とその基盤が、こうした活動の積み重ねを通して醸成され次第に確かなものになっていく。
 
 
 
  参考文献
中央教育審議会「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」(答申)平成11(1999)年12月16日
 
 
 
 
 



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