生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2015(平成27)年6月21日
 
 

伊賀市比自岐地区における住民自治としての公民館活動 (いがしひじきちくにおけるじゅうみんじちとしてのこうみんかんかつどう)

キーワード : 公民館、住民自治、協働、地域活性化、市町村合併
内山淳子(うちやまじゅんこ)
3.住民自治と学習活動
  
 
 
 
  1.住民自治の参加のしくみ「地域まちづくり計画」の策定
 平成16(2004)年の伊賀市自治基本条例施行にともない、比自岐地区では、「コスモス祭り」「ホタル祭り」を実施してきた比自岐・摺見・岡波の3自治会区からなる連合自治会が「比自岐地区住民自治協議会」を立ち上げた。  
 住民自治の主体団体となる住民自治協議会は「地域住民により自発的に設置された組織」(第24条)とされ、同意、諮問と答申、提案、質問といった当該地域の公共的意思決定に関与できる「参加」のしくみを備えている。ただし「住民自治協議会の権能」を示す第26条において、市長は住民自治協議会の答申、提案、受託を行う決定を「尊重する」とされ、最終権限は首長にある。
 伊賀市自治基本条例は住民参加の制度として、「自らが取り組む活動方針や内容等を定めた地域まちづくり計画の策定に努める」(第28条1項)と住民自治協議会に「地域まちづくり計画」の策定を規定している。比自岐地区住民自治協議会は、平成18(2006)年に「比自岐地区まちづくり計画‘ひじきコスモスプラン’」を策定した。
 「ひじきコスモスプラン」の内容は生活全般に関わって多岐にわたり、合併前からの継続事業として「コスモス祭り」「ホタル祭り」(企画・交流部会)、「健康の駅長会事業」「地区民まるごと体育祭」(健康・スポーツ部会)、「公民館活動の充実」「祇園踊り保存会の充実」(教育・文化部会)他がある。新規事業計画としては、「農村文化と漁村文化の交流」(企画・交流部会)、「集落営農の確立」(産業振興部会)、「生きがい教室の開設」(福祉部会)などが策定され、合併8年後には集落営農組織の法人化を実現した。

2.住民自治活動の実践
 伊賀市は住民自治協議会などの市民活動支援として、採択制で1年単位の地域活動支援補助金交付を行なっている。比自岐地区住民自治協議会は平成20(2008)年度に「農山・漁村物産交流広場「笑みの市」開設事業」、2009年度に「高齢者世帯エスコート事業」が採択された。
 「伊賀市第2次地域福祉計画(2011)」によれば、住民自治協議会は「組・班」といった近隣地区や「自治区」をまとめる上位の「福祉区」としても位置付けられている。高齢化率が4割を上回った比自岐地区では、高齢者が安心して暮らせる地域づくりは重要課題であり、「コスモスプラン」の「福祉部会」は地区の福祉計画を兼ねた「高齢者世帯エスコート事業」を計画した。
 事業計画時に福祉部会の実行委員が中心となって、高齢者夫婦世帯、高齢者一人暮らし世帯を一戸ずつ訪ね、支援の必要性や内容を問うアンケートを行い、「タンスなど重いものの移動、電球の付け替え、日用品の買い物や薬もらい、雨樋のつまり」など助けを必要とする困りごとを地区のボランティアが支援する体制を整えた。
 以上のように、住民の活動はかつてのサークル活動や社会教育委嘱委員としての公民館活動への「参加」から、「協働」の制度のもとで自治の主体に位置づけられるようになった。比自岐地区の住民自治活動は、従来から続けられてきた伝統行事や公民館活動を通して培われた協力体制の成果といえよう。今後進展が予想される住民自治においても、集い、学ぶ機会とその支援は不可欠である。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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