生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年10月31日
 
 

ネットディと生涯学習 (ねっとでぃとしょうがいがくしゅう)

Net Day and Lifelong Learning
キーワード : ボランティア、インターネット接続、学校教育の情報化、「開かれた学校」づくり、地域社会
綾牧子(あやまきこ)
1.ネットデイの概要
  
 
 
 
  【ネットデイとは】
 学校の子どもたちひとりひとりが、情報ネットワークにアクセスできる環境を整えることを目的として、保護者や地域住民、教師、子どもたちなどが、ボランティアで学校のインターネット接続の環境を整備するイベントである。小学校や中学校の校舎の中に、インターネットの線を這わせてゆき、どの教室からでもインターネットに接続できるよう環境を整える。ボランティアで実施するため、かかる経費は配線部材費のみである。
 ネットデイまでの一般的な流れとしては、約3ヶ月前に実行委員会を組織し、ネットデイの実施に向けて、保護者や地域住民、教職員とのコンセンサスを得る。約1ヶ月前には、校舎内の配線経路を決定し、部材の調達、講習会の実施などを行う。ネットデイ当日は、事前の全体説明会で、仕事の洗い出しと適切な役割分担をし、ワークショップで参加者全員が共通認識を持つようにする。その後、実際の工事にあたっては、必要な部材と人材を適切に配置し、安全な工事進行のノウハウを共有し、工事全体の状況を俯瞰する機能を用意する。各班が自発的に判断して工事を行っていく。一連の工事が終了した後、開通式でインターネットの開通を確認し、参加者全員で達成感を共有することとなる。その後も、保護者や地域住民からの継続的な支援や、地域と学校が一体となるような活動へ発展する方向に向かわせることができる。
 ネットデイは、単に学校内のネットワーク環境を整えるだけではなく、参加した多くのボランティアの中に協働作業を通じた連帯感が生まれるため、参加者それぞれにとっても、また学校や地域の連携という点からも、メリットの大きい取組みである。
【ネットデイのおいたち】
 ネットデイは、アメリカのカリフォルニアで始まった「子どもたちにインターネット環境を!」を合言葉にした、市民や企業がボランティアで展開する市民活動に由来している。アメリカでは、1990年代半ば、急速に情報化が進展しつつあり、子どもたちにインターネットを利用させるために、学校のネットワーク環境を整備することが必要と考えられるようになっていた。しかし、教育関係の予算は少なく、教室をインターネットに接続するための費用が十分ではなかった。そのような中、1994年、サンフランシスコのラジオディレクターだったマイケル・カフマンら、親達が中心となって、ボランティアの人的支援と安く大量に仕入れた機材や資材を使い、5ヶ月間で市内150校すべての教室にネットワーク回線を張り巡らせた。
 さらに、1995年4月、シリコンバレーに本社があるコンピューターメーカーのジョン・ゲイジは、シリコンバレーにあるハイテク企業がすべての資金を用意し、ボランティアによって必要な人材をまかない、ワールド・ワイド・ウェッブのサイトを使って、ボランティアとパートナーたちを学校と結びつけるプロジェクトを考案した。これが、アメリカのNetDayの原案である。その後、活動が拡大し、さらにクリントン政権が、NetDayを率先して応援するようになり、全米の学校のインターネット接続率は、3年間で12%から89%へと飛躍的に向上した。しかも、行政が費用を負担することなく実現させた。NetDayは、ボランティアの共同体が学校の技術レベルの向上に寄与すること、さらに市民の手によるネットワーク構築の可能性を世界に示したといえる。
 
 
 
  参考文献
・『平成13年度文部科学省委嘱事業 ネットデイの進展に関する調査研究』(社)日本教育工学振興会、平成14年3月(http://www.japet.jp/netday/Netday_13.pdf)
・『校内ネットワーク活用ガイドブック2005−地域とともに築く校内ネットワーク(ネットデイ)』(社)日本教育工学振興会、平成17年(http://www.netday.gr.jp/doc/e-japan.pdf)
・ネットデイfor未来、http://www.netday.gr.jp/、参照日:平成18年10月31日
 
 
 
 
  



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