登録/更新年月日:2010(平成22)年10月10日 |
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アメリカ高等教育では、1960年代にサービス・ラーニングの組織的な実践と専門的な研究活動の双方が着手されている。 アメリカ合衆国には、大学の3つの機能「教育機能」、「研究機能」、「社会貢献機能」のいずれにおいても、地域社会からのニーズに応えることを強く志向する伝統がある。当時、高等教育につきつけられていたのは、貧困や人種、ジェンダー、平和などをめぐる社会的矛盾を解決することであり、これら住民たちのニーズに応えるサービスの在り方が模索されはじめていた。そうした取り組みの中で編み出されたのが、専門的知識やスキルをもつ大学教員や学生が、実際に地域社会の活動に参加し、住民とともにコミュニティ改善に取り組む実践活動であった。この新しい大学の取り組みに有効な教育手法として形作られたものが、サービス・ラーニングの原型だといわれている。 ほどなくして、この活動が学生たちの精神的な成長や、各分野の専門家としての実践的なスキルアップを促す活動として、その教育的な効果がキャンパス内で注目されることとなり、サービス・ラーニングは教育学的な発展と正規の教育課程としてキャンパス内での制度化を果たすことになった。 こうしたサービス・ラーニングの高等教育内での発展経緯を考慮し、サービス・ラーニングの教育方法としての特性を明らかにしたのが、フルーコ(Fruco、 A.)である。彼は、大学での経験を活用した4つの教育機会(ボランティア活動、インターンシップ、コミュニティ・サービス、実地研究)とサービス・ラーニングとの間にある差異を考察することによって、その特性を論じている。 その際、それらの関係性を明示するために2つの指標を設定した。その一つが、サービスと学習のどちらに重点がおかれたものであるかの度合いであり、もう一つが、その活動が誰に「恩恵」(beneficiary)を与えるための活動なのかという点である。すなわち、活動を受けいれる者や機関のための活動なのか、それとも活動を提供する者や機関のための活動なのかという度合いである。この2点を視点とし、5つの教育機会の関係性を示したのが、図1である。 フルーコは、サービスと学習とが同等に重視され、さらに、活動を受け入れる機関(地域社会の機関)と、活動を提供している大学(学生)との双方にとっても同程度の恩恵がもたらされる活動をサービス・ラーニングとし、5つの経験を活用した学習活動のちょうど中央にサービス・ラーニングを位置づけている。 この分類において最も注目すべきは地域社会のニーズに的確に応えられるサービス活動でなければならないと明示した点にある。それまで通常の高等教育において、学習者の成長以外がその目標の中心に据えられることはまずなかった。つまり、「学ぶ人と学ばせる人」や「学生と地域住民」、あるいは、「大学と地域社会」の区分をなくし、すべて同じコミュニティの一部・構成員として活動することが、サービス・ラーニングでは求められる。こうした高等教育と地域との連携のあり方に、画期的な変化をもたらした教育手法としてサービス・ラーニングのもたらした影響は大きい。 br> 添付資料:図1フルーコのサービス・ラーニング概念 |
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参考文献 ・Jacoby, B.,"Service-Learning in Today's Higher Education" in Service-Learning in Higher Education: Concepts and Practices, Jossey-Bass, 1996. ・志々田まなみ・熊谷愼之輔「地域社会との連携教育活動に対するアセスメントに関する考察-アメリカ高等教育のサービス・ラーニングにおけるアセスメントに着目して-」『日本生涯教育学会年報』第30号2009年 |
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