登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
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国連における第3回総会で採択された世界人権宣言(1948年)における「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。」(第1条)にみられるように、戦後間もなく世界的に人権に対する意識に目が向けられるようになり、このような動向から障害のある人を含め人間ひとりひとりの尊厳について深く受けとめる流れの基盤が形成されていく。 しかしながら、歴史的にみて障害のある人は、ハンセン病施設の事例などからもみられるように施設に収容され、社会から遠ざけられ隔離された状態で存在することを強要され、「個人の尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利」(障害者基本法第3条)を得るまで相当の時間がかかった。同様の隔離政策が福祉国家のひとつデンマークで問題視され、バンクミケルセン(Bank-Mikkelsen,N.E.)によってノーマライゼーション(normalization,常態化)という考え方が1950年代に入り提唱され、さらにスウェーデンのニーリエ(Nirje,B.)によって引き継がれ、広められていった。 ノーマライゼーションとは、従前の隔離政策とは一線を画し、障害のある人もない人も社会の一員として互いに尊重し支えあい、地域の中でともに生活する社会が常態の社会であるという考えを基盤とする。これを現実の社会で達成するには、いくつかのハードルがある。社会とは、国民ひとりひとりの意識や理解の上に成り立つものであり、わが国における現状ではノーマライゼーションが完全に行きわたっているとはいい難い。つまり、障害のある人が社会のなかで快適に過ごせるように、障害のある人を受け入れるための準備や整備を物的・心的、法的側面から今後もすすめていく必要がある。 1981年、国連はこの年を国際障害者年と定め、啓発を行った。これを受け、日本では翌年からの国連による「障害者の十年」の国内行動計画として、障害のある人に関する施策の初の長期計画「障害者対策に関する長期計画」が、そしてその後、「障害者プラン〜ノーマライゼーション7カ年戦略〜」(1995年)、「障害者基本計画」(2002年)がそれぞれ策定された。これらの長期計画はいずれもノーマライゼーションの精神を基本にしている。 また、「高齢者、身体障害者が円滑に利用できる特定建築物の建築の推進に関する法律」(通称「ハートビル法」)が1994年に、また「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の推進に関する法律」(通称「交通バリアフリー法」)が2000年にそれぞれ制定された。現在ではさらに進んで、メイス(Mace, R.L.)が1980年代に提唱したユニバーサルデザインという考え方に向けた取り組みがわが国でもなされてきている。 ユニバーサルデザインとは、バリアフリーが障壁を取り除くという発想であるのに対して、年齢、性別、障害の有無などにかかわらず、住宅、食器、乗用車等について、はじめから障壁のないだれにでも使いやすいように設計されたデザインであり、その必要性が主張され、実際に設計され、製造されはじめている。こうした取り組みは、障害のある人とない人がともに生きることへの意識を向上させることにつながるであろう。 *追記:法務省「平成17年度人権教育・啓発に関する年次報告書」(平成18年6月発行予定)では、「障がい者」を「障害のある人」と表記することになっており、本稿においてはこれに倣うこととした。 br> |
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参考文献 ・稲生勁吾「障害者の生涯学習」小原信・神長勲編『日本の福祉』以文堂、2001年 ・総理府障害者施策推進本部担当室『21世紀に向けた障害者施策の新たな展開 障害者プラン・障害者基本法・新長期計画』中央法規出版、1996年 ・総理府編『「国連・障害者の十年」の記録』、1993年 ・厚生労働省「障害者白書」、2005年 ・花村春樹『「ノーマリゼーションの父」N・E・バンク―ミケルセン その生涯と思想』ミネルヴァ書房、1998年 ・古瀬敏『ユニバーサルデザインへの挑戦 住宅・まち・高齢社会とユニバーサルデザイン』ネオ書房、2002年 |
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