生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年10月28日
 
 

青少年の自然体験活動 (せいしょうねんのしぜんたいけんかつどう)

experiential activities of outdoor for youth
キーワード : 自然体験活動の意義、直接体験、感性、集団宿泊活動
渋谷健治(しぶやけんじ)
3.事例2
  
 
 
 
  ○子どもの体験活動を青年が支援!
 マウンテンバイクでの「能登半島一周」
 国立能登青少年交流の家(石川県羽咋市)は、青年と小・中学生を対象に6泊7日を通して、約300キロに及ぶ「能登半島」をマウンテンバイクで走行しながら一周する事業を実施している。
 1都5県からの青年参加者は大学生や教員、フリーターなど10人、一方、北陸各県を中心とした子どもの参加者は不登校児童・生徒を含め同様に10人である。期間中は、能登半島内の廃校や公民館などを借用しながら宿泊生活をして移動する。
 夏に実施される本事業は、毎日、炎天下約50キロメートルを10人程2グループに分かれて一日中走行する。能登半島一周の進路は、各グループ毎相談しながら、自分達で進む道や方向を地図を参照しながら決定する。青年参加者は、子ども達の主体性を引き出すため、敢えて子ども達に必要以上の指示は控え、食事の準備や活動の準備・片付けもすべて子ども達が自ら行えるように導いている。
 夜の班別ミーティングでは、青年・少年双方の参加者による一日の活動の振り返り、反省、明日への意欲の喚起などを行っている。その後の青年参加者だけのミーティングでは、子ども達の健康状態やトラブルなどの対応について共有する。毎晩、臨床心理士のアドバイスを受けながら、子どもとの接し方やトラブルへの対応などについて学習し、子どもと達との係わりを実践的に習得している。
 ≪主な活動内容≫
 マウンテンバイクでの能登半島走行、棚田での除草ボランティア体験、シュノーケリング、筏での渡海、炊事作り、清掃、高校での航空体験など。
 この事業では、青年と子ども達が能登半島一周という共通の目標に向いながら、協力して日々の生活や活動を行っている。青年は自分の少年時代を一緒にマウンテンバイクで走る子どもに重ねながら、途中で挫折しないよう励ましたり、アドバイスをおくっている。青年達は、日々成長するように変化を示す子ども達の言動に驚きつつ、他の青年参加者の行動や考え方に多くの刺激を受ける機会となっている。 
 各県から参加した異質・異年齢の子どもの小集団は、初日から3日目頃になると、自己中心的な子が契機となりしばしば仲間とトラブルを起こす。しかし、中盤の5日、6日目頃になるとグループの凝集性が高まり、見違えるように行動に協調性が見られるように変化していく。青年・少年が共に人と係わることの楽しさ、人と接することの難しさなどに一喜一憂し、時には無力感を覚え、最終日にはこれらが達成感や充実感へと変化していく。少年にとって面倒見がよく頼れる青年は、なんでも相談できる身近な存在でもある。
 この事業に2年前に参加した教員のA青年は、今でも当時不登校だった少年(現在は宅配便の運送に従事)と年に数度の文通で、交流を継続している。このA青年は、この事業に参加したことは自分にとって大きな収穫であり、今の自分の仕事観や生き方に大きな影響を与えていると述懐している。

 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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