登録/更新年月日:2009(平成21)年4月27日 |
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本項では、佐野市生涯学習推進基本構想が求める「私らしさ」と市民参画について、同構想の重点プロジェクト「子育てまちづくり」(図3「子育てまちづくり支援事業の概要」)を例にとり、子育ての個人的側面と社会的側面に着目して解説する(図4「子育ての個人的側面と社会的側面」)。 【個人完結型の子育てと社会開放型の子育て】 各地の「子育てのまちづくり」推進においては、「子育て支援」のまちづくりに偏っていて、「子育て活動」によるまちづくりへのアプローチが少なかった。そのため、個人完結型の側面に偏りがちで、子育て自体の社会開放型の側面を見落としがちであったといえる。このままでは、子育ての「社会化」の名の下に、母親の就労支援等が先行し、結果として、子育ての「個人化」傾向と、「あなた任せ」、「専門家任せ」の無責任な子育ての拡大が危惧される。 佐野市基本構想は、保育園、幼稚園、学校、児童館、学童保育所などの関連機関が、網羅的に、保護者会、PTA、子育てサークル、青少年育成活動などの参画のための「子育てまちづくり拠点」として機能するよう求めている。これは、子育て支援機関が、個人完結型の子育てとともに、親の参画による社会開放型の子育てを支援することを意味する。 【個人完結と社会開放の関係及び揺れ】 これまで、一般的に、親の個人化傾向が問題視され、社会化について、方法論を持たない期待が繰り返されてきた。これに対して、佐野市では、わが子をよく見る「私らしい子育て」と、社会とともに歩む「このまちらしい子育て」を、等価として統合的にとらえたものと設定して取り組んでいる(図5「私らしい子育てとこのまちらしい子育ての統合」)。 「子育てまちづくり」への参画の中で、親は、個人完結と社会開放の両者の子育て活動のあいだを揺れ動く。従来の子育て研究においては、結果を見たいがために、いずれかの一方向からしか見てこなかった。だが、参画する個人にとっては、「私らしい子育て」と「このまちらしい子育て」はボーダーレスな関係であり、個人主導と社会参画は無意識のうちに統合されているととらえる方が自然であろう。 この揺れの中で公私の子育て活動は充実する。その展望をもたずに、子育ての個人化傾向のマイナス面を一方的に責める視点は、個人と社会の断絶を深めることになりかねない。 【私らしさと市民参画の螺旋的発展】 とくに専業主婦は、子育ての中で、「自分のための時間をもちたい」と切望することが多い。これを単なるわがままや逃避ととらえるのではなく、生涯学習活動及び参画活動の契機ととらえる必要がある。 自我が確立するに従って、個人完結と社会開放の揺れの幅は大きくなる。「私らしい子育て」と「このまちらしい子育て」の両者の気づきの振幅が大きいほど、親の人生のなかで、子育ての時期が貴重な体験となる。まちづくりに参画する親のこれまでの発言からは、自己の子育ての捉え直しによる子育てまちづくりへの新たな視点の提起が多く観察された。このように、佐野市生涯学習推進における「子育てまちづくり」は、親の自己形成にとっては、私らしさと市民参画の間を循環しながら螺旋的に発展する契機となっている。 市民参画研究においては、自己形成と社会形成の一体的視点から、この螺旋の上げ幅や速度を高めるための方法論を構築することが期待される。 br> 添付資料:市民参画における「私らしさ」の個人的側面と社会的側面 |
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参考文献 ・西村美東士「参画型子育てまちづくり活動から見た生涯学習推進の展望―源流から市場へ:子育ての源流からまち、社会、市場への展開」、聖徳大学生涯学習研究所紀要『生涯学習研究』7号、pp.1-10、2009年3月 |
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