登録/更新年月日:2012(平成24)年1月3日 |
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【概要】 ラ・ヴェルネーダ・サン・マルティは、スペインにおける成人学校(成人教育機関としての市民大学)の1つであり、カタルーニヤ州の州都バルセロナに所在する。有名なスペイン内戦後の1971年に創設されている。同市の北東部のサン・マルティ地区にあり、7階建てのビルの1階に託児所、2階と3階に福祉施設、4階に図書館を備える複合施設としての市のシビック・センターの5階に学校がある。18歳以上の受講生は1,750人で(2009年9月現在)、開講日および時間は、毎月曜日から金曜日までは9時から22時まで、土曜日と日曜日は9時から13時30分まで、16時から20時30分までとなっている。同校はバルセロナ市立学校規定に則って運営される成人学校であり、基本的な運営経費は同市の財政が担っているが、各種協力団体からの寄付金が多いという点でスペインの学校の特色がある。 【動向】 同校が設置された背景には、第二次大戦とフランコ政権によるカタルーニヤ地方への政治弾圧というスペインの歴史的経緯から発する問題と、そのことに関連する人々の教育要求が基底に存在する。カタルーニヤ地方が人民戦線の拠点であったことから、フランコ政権がカタルーニア語の使用を禁止するとともに、学校での教育機会を剥奪していたことに対する不満からの教育要求だと考えられる。 こうしたカタルーニヤ地方の事情から、フランコ政権後の民主化運動での教育要求を具現化する形としての成人基礎教育の場を同校に求めたのである。 ラ・ヴェルネーダ・サン・マルティが所在するサン・マルティ地区は、かつては低所得の労働者が多く居住する地域であった。現在は、産業的には北部の工業と南部の商業が中心となってバルセロナ市の発展に寄与している。 「教育を受けることは人権の獲得そのものである」と胸を張る学習者からは教育費用を徴収していない。経費は、バルセロナ市からの補助金以外に、各種協力団体からの寄付と協賛によって賄われる。ヴェルネーダ地区には、アゴラと呼ばれ、約30万人が参加する教育支援や文化支援を目的とする協会組織があり、またエウラと称して、参加型民主主義や男女共同参画社会について学ぶ女性支援団体がある。このような非営利市民活動団体の協力や4大学の協賛があり、さらに150人に及ぶ同校の講師や職員のすべてがボランティアとして働いているのである。これら以外に、収入の途として各種の教育プロジェクトへの参加という方策も採られている。 br> |
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参考文献 ・金光直子「第5章 スペイン・バルセロナ市の市民大学」(『成人学力開発のための生涯学習事業についての研究−市民大学の実態から−』、神戸学院大学人文学部研究推進費研究成果報告書、2010年12月) ・澤野由紀子「ヨーロッパの市民大学%`統と変容」(『社会教育』、全日本社会教育連合会、1996年11月) |
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