登録/更新年月日:2012(平成24)年1月3日 |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
|
|||||||||||||
【教育内容】 ラ・ヴェルネーダ・サン・マルティでは、成人基礎教育として識字教育が実施されている。識字講座はどの時間帯でも受講が可能となるように開設されている。具体的な教育については、バルセロナ大学の協力を得てプログラムが編成され、教育内容や方法が構成されている。大学からはボランティアとしての講師派遣があり、ほかにアメリカのハーバード大学による研究支援もある。 教育内容と方法の視点から、ブラジルのパウロ・フレイレが提唱する対話法が採用されてカタルーニヤ語の授業が進められる。とりわけ語学への対応が充実しており、基礎的な読解力が得られた者には、高いレベルの文学や古典を学ぶことができるカリキュラムが用意されている。学習者は、セルバンテスなどの郷土作家の作品の学習をとおして、カタルーニヤへの愛情を増幅させる。またカフカの作品など、ヨーロッパ近現代文学を学ぼうとする学習要求もある。 識字教育や語学・文学以外では、芸術論、ダンス・音楽、カスタネット、民族舞踊であるサルダーナ、フラメンコの曲と言えるセビジャーナスなどがプログラム化されている。 学習者の多くは近隣地域の住民であるが、遠方からの参加者もあり、スペイン国内各地から参加している。口コミによる募集が中心で、学習情報提供はほとんどなされていないようであるが、受講希望者が多く、定員を超えたために待機している人が少なくないといった実態がある。 【課題】 同校の教育課題には、基礎学力が十分ではない人々の教育をどうするのかということがあり、また社会との関わりの中でどのような学力を獲得すべきなのかを明確にすることがあげられる。前者については、学習者の側に学校教育の機会を与えられなかったことから生まれた自信のなさがあり、自尊感情が十分に形成されていないのではないかと思われる。読み書きリテラシーという根幹の学力に、不安を持つ人々が多いという実態がある。また後者については、学習者が学習機会を得たことで自己認識が高まり、フレイレが指摘するような学習者と指導者、学習者相互の対話によって学習が成立し、社会的問題を提起できるようになるのかという課題がある。 こうした課題の克服をふまえ、「人生をいきいきと生きる」という目標を持ち、成人基礎教育の機会を、求める人に平等に提供するという趣旨が生かされた成人学校としての同校は、日本における市民大学のあり方に強い示唆を与えるものと考える。 br> |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
参考文献 ・金光直子「第5章 スペイン・バルセロナ市の市民大学」(『成人学力開発のための生涯学習事業についての研究−市民大学の実態から−』、神戸学院大学人文学部研究推進費研究成果報告書、2010年12月) ・澤野由紀子「ヨーロッパの市民大学%`統と変容」(『社会教育』、全日本社会教育連合会、1996年11月) |
|||||||||||||
『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。 |
|||||||||||||
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved. |