生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年10月26日
 
 

社会教育指導員 (しゃかいきょういくしどういん)

キーワード : 社会教育指導員の任用条件、社会教育指導員の職務内容、社会教育指導員の職務遂行以上の留意点
加藤雅晴(かとうまさはる)
3.職務遂行上の留意点
  
 
 
 
   社会教育指導員としてその職務を全うするためには、次のような点に留意する必要があろう。
(1)今なお、社会教育指導員には退職教職員など地域の有識者が任用される場合が少なくない。時には、社会教育主事が社会教育指導員の後輩ということも間々ある。そんな時、つい先輩面をして攻守所を替えてしまいがちになりがちである。このようなことは、厳に慎まなければならない。当該市町村の社会教育行政の中核的な指導者は、社会教育主事であることを常に自覚しておくべきであろう。
(2)だからと言って、社会教育主事に命ぜられた職分だけを果たしていれば良いなどと消極的な態度では困る。社会教育指導員の中には、長年培ってきた職場経験、人生経験から深い識見と豊かな人間性を持った者も少なくない。つまり、人生の先輩として地域の社会教育の振興に役立つことであれば、積極的に助言、進言したいものである。
(3)社会教育のみならずどんな仕事でも、本来の職務とは無関係と思われる雑務に多くの時間が取られるのはよくあることである。社会教育指導員は特定分野を担当する内容別の専門家であるから、それに関わる指導、助言以外の一切の雑事は断るなどと言ったら、その職務など果たせるものではない。学習の成果を高めるためには、座席の配置を変えたり、パソコン、プロジェクター、OHCなどの様々な機器を準備したり、教材の作成、配布など雑務の方が多いとさえ言える。この雑事を否定したら社会教育活動は成り立たないことを理解する必要がある。
(4)このことは、取り分け教職経験者の社会教育指導員に期待されることであるが、学校教育と社会教育の連携、融合に尽力して欲しいものである。今、子ども達を巡る環境は危機的な状況にある。いじめ、不登校、学級崩壊等々の問題行動は減少傾向にあるとはいえ看過出来るような状況ではない。更に、想像を絶するような少年少女の猟奇的な事件が続発し、世間を唖然とさせている。学校だ家庭だとその責任を擦り付けている段階ではない。このような問題に対し社会全体でどう取り組んでいくか。教育経験豊かな社会教育指導員に期待されることは大きい。
(5)社会教育指導員は、教育委員会事務局の補助職員ではない。任用された最大の理由は、特定分野における専門家として認められたからである。雑事の必要性ついては上述したが、それはあくまでも派生的なことであり、本務は専門家である。その専門家としての矜持は常に堅持しなければならない。しかも、その矜持は社会教育の識見に裏づけされていなければならない。特に教員経験者は、ともすれば学校教育的発想、手法で社会教育活動の指導を行いがちであるが、まま失敗する。前職の経験の上に社会教育の特質を理解し、社会教育的手法によって指導する必要性も理解すべきであろう。そのためには、社会教育史、社会教育行政、社会教育施設、社会教育方法論などの社会教育に関する基礎的な科目は一通りマスターして置かなければならないのは言うまでもない。また、教育委員会も社会教育指導員は、たかだか2,3年の非常勤職員だからと安易に考えるのではなく、様々な研修会に参加する機会を積極的に与え、その資質向上を図るよう努めるべきである。
 
 
 
  参考文献
・河野重男他『新社会教育事典』第一法規、昭和58年
・加藤雅晴他『社会教育の展望』学文社、昭和63年
・『生涯学習概論ハンドブック』国立教育政策研究所社会教育実践研究センター、平成16年
 
 
 
 
  



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