生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2007(平成19)年12月26日
 
 

広島県立生涯学習センターの取り組みと課題 (ひろしまけんりつしょうがいがくしゅうせんたーのとりくみとかだい)

efforts and challenges of Lifelong Learning Promotion Center in Hiroshima Prefecture
キーワード : 生涯学習センター、研修、向き合う力、質的情報、実践−研究員
葛原生子(くずはらいくこ)
1.生涯学習センターの役割と機能の再検討
  
 
 
 
  【取組の背景】
 地方分権改革、その一環としての市町村合併により、生涯学習推進における都道府県の役割が問われ、その中でも都道府県の生涯学習推進の中心機関として位置付けられている生涯学習(推進)センターの機能の再検討が緊急の課題となっている。都道府県(以下県と略す)の生涯学習センターは、従来から、住民への直接的なサービスというよりもむしろ市町村や関係機関(関係者)への支援機能を重視してきた。それにもかかわらず、市町村関係者も建造物としての県立生涯学習センターが存在していることは知っていても、その目的や役割・機能はあまりよく理解していない実態がある。そこで、広島県立生涯学習センターでは、県内の市町村生涯学習・社会教育担当者への質問紙調査とNPO等への聞取り調査を行い、今求められているセンターの役割と機能の確認作業を行った。
【調査から見えてきた課題】
(1)見直しを迫られる研修のあり方
 関係職員、指導者の養成・研修は、生涯学習センターに最も期待されている重要な役割である。ところが、従来の集める形の「県主催の研修」は、経験者は多いが有効性はあまり高くないことがわかった。関係職員が必要と考えている能力は、「地域の実態や課題をとらえる力」「コミュニケーション能力」「親しみやすさ」「他の職員と協力して事業を推進する力」といった「向き合う力」といえる能力であった。また、研修・能力開発で有効性が高いのは、「日常業務の中での職員間の学び合い」「自主的な学習会の開催、参加」「関連情報の収集・文献の購読」といった自主的な学習であった。センターの研修を、「向き合う力」を開発する、地域の実態やニーズにあった自主的な学びの場づくりを支援できるようなものに転換していくことが、第一の課題である。
(2)地域格差への対応
 広島県の市町村が県立生涯学習センターに期待していることの第二は、学習プログラムの開発やモデル事業の実施である。このことに関連して、注目すべきことは、市町村、各施設の「現代的(地域)課題に対応する学習プログラムの開発と実施」状況に顕著な地域格差がみられ、都市部に比べ、中山間地域が低調であったことである。公民館の職員体制(館長除く)も、1館あたり都市部2.54人に対し中山間地域は1.21人である。このような格差に危機感を感じている地域が、センターとの連携・支援を求めていることも明らかになった。合併による地域内格差と同時に、都市部と中山間地域の格差への対応、特に中山間地域のニーズへの適切な対応が、取り組むべき重要な課題の一つと認識された。
(3)連携・協働をめぐる問題
 また、「現代的(地域)課題に対応する学習プログラムの開発と実施」について、取組態度の高い人(実績もあり、今後も取り組みたい人)は、NPO等との連携に積極的であることがわかった。「現代的課題の解決は、一つの部署だけでできるわけではない」と、行政部局間の連携の必要性も認識されている。連携・協働を促進することが、今後ますます生涯学習センターの重要な役割になっているが、その前にセンター自体に、NPOから「センターが何をしてくれるところか漠としてわからないので、ミッションをしっかり発信してほしい。組んで何を一緒にやれるかわからない」といった指摘もあり、連携・協働の促進は、センター自体の問題も含めより戦略的取組が求められている。
 
 
 
  参考文献
・鈴木眞理・守井典子編著『生涯学習の計画・施設論』学文社、2003(平成15)年。
・国立教育政策研究所社会教育実践研究センター『生涯学習センター等と市町村との連携に関する調査研究報告書』、2004(平成16)年。
・広島県社会教育活性化推進委員会『市町村合併に伴う県立生涯学習センターの役割と機能に関する調査研究 報告書』理論編・資料編、2006 (平成18)年。
・楽習の場づくり研究会(代表・葛原生子)『市町村に対する実態調査報告書』2005(平成17)年。
 
 
 
 
  



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