生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年11月25日
 
 

職業能力開発と生涯学習振興施策 (しょくぎょうのうりょくかいはつとしょうがいがくしゅうしんこうしさく)

キーワード : 職業能力開発、エンプロイヤビリティ、自己啓発、キャリア教育、リカレント教育
今野雅裕(こんのまさひろ)
3.教育行政と労働行政の連携推進
  
 
 
 
  ア.臨教審答申・生涯学習振興法
 昭和61(1986)年の臨教審第2次答申では、「生涯学習体系への移行」に関わって、「生涯職業能力開発の総合的推進」が提言された。「40有余年と長期化した職業生涯を通じた職業能力開発を総合的に推進する」として、企業でのOJT、Off-JTの段階的・体系的な実施、大学・公共訓練施設の社会人の学習の場としての整備、職業能力開発関連情報のネットワーク化、教育訓練休暇制度、職業資格など職業能力評価制度などをも含め、総合的に検討すべきことをうたった。平成4(1992)年成立の生涯学習振興法(第2条)では、生涯学習の振興施策を実施するに当たっては、「職業能力の開発及び向上、…に関し生涯学習に資するための別に講じられる施策と相まって、効果的にこれを行うよう努めるものとする」とされている。職業能力の開発・向上にかかる学習も当然、生涯学習の範疇にあり、むしろその中核的な領域の一部を占めるべきものと考えられるところから、特記して、教育行政と労働行政施策との連携の必要をうたったものと考えられる。
イ.今後の連携
 しかしこれまでは、労働行政と教育行政では、上記の臨教審答申や生涯学習振興法の規定にも関わらず、あまり積極的な連携策は講じられてこなかったと言ってよい。どちらかと言うと、依然として、前者は、勤労者(失業者を含め)の、それもブルーカラー層を中心とした者への施策が中心であり、後者は、学校での一般的な教育(職業教育を含む)での施策に限られてきたきらいがある。しかし、教育は社会的・職業的人材の育成という面で、直接、労働行政に関わってくるものであり、必要な連携が図られるべきことは当然のことである。最近は、若年層の職業能力の開発、就業促進の観点から、個別の事業展開において、両行政の協力連携が図られるようになってきた。
 一つは、教育訓練給付制度の専門学校・大学等での実施である。厚生労働省は、平成10(1998)年度から、労働大臣の指定施設に、専門学校や大学等が含めることとした。このため、多くの社会人が専門学校・大学等で、公費の支援を受けながら職業能力向上のためのリカレント教育を受けることができるようになった。
 もう一つが、委託職業訓練制度の専門学校等への拡充・適用である。ハローワークの受講指示等を受けた求職者(離転職者)は、雇用・能力開発機構が委託する各種の職業訓練機関での研修コースを、公費で受けることができるが、平成14(2002)年度からは、専修学校・各種学校、大学・大学院も委託対象として認められることとなった。これにより、専門学校・大学等で3ヶ月程度の職業教育コースが設置されている。
 また、さらに、最近のフリーター対策等の観点からも、専門学校などを中心にして、若者の自立・挑戦を支援する事業として、短期教育プログラムの開発・導入、実務・教育連結型人材育成システム(日本版デュアルシステム)などが労働行政と軌を一にしながら実施されるところとなっている。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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