登録/更新年月日:2016(平成28)年1月1日 |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
|
|||||||||||||
子育て支援が国の重点課題となっている背景には少子化問題がある。平成2(1990)年以降、政府は複数省庁合意の少子化対策、子育て支援策を次々と打ち出してきたが、合計特殊出生率は平成17(2005)年に1.26まで下がり、その後は微増しているものの大きな成果は上がっていない。少子化は生産年齢人口および総人口の減少をもたらし、労働力の低下は国の経済を揺るがす。併せて超高齢化が進み、状況は深刻である。そのため国は、第一に出生数を増やす、第二に減少する生産年齢人口を補う潜在的な女性の労働力を生かすために、働きながらも子どもを生み育てやすい社会の条件整備に力を入れている。女性の活躍推進と表裏一体で子育て支援策が進められている。 【子育てが困難な時代】 女性の就労、社会参加がますます進むことが予測されるが、仕事と子育ての両立は難しい。母親のみに育児の負担が集中している日本では、仕事をいったん離れる母親は少なくない。男性中心の企業風土や経済的な厳しさの中では、長時間労働が当たり前で制度はあっても育児休暇は取りにくい職場の空気を変えていくことは難しく、働く母親は個々人で何とかやりくりをしなければならなかった。そうなると無理のしわ寄せは家庭に行く。これまでも「家庭の教育力」の低下が問題とされてきた。背景には、就労状況以外にも核家族化や地域のつながりの希薄化、子育てを学ぶ機会の減少など社会の変化がある。子育てが困難な時代なのである。 【養育の社会的責任】 女性が長く就労することは、親に代わる養育者がいない核家族が主流の現在、家庭での教育が十分に行えない家庭が増える可能性があるということでもある。女性の活躍を推進する社会は、(父親も含めて)親が家庭で過ごすゆとりをきちんと保障するか、養育の社会的責任を自覚し、家庭教育を補完あるいは代替する機能を準備しなければならない。「養育の社会化」が必要な時代を迎えている。 【保育と教育の両方の視点】 子どもたちが健やかに成長することは、親の願いであると同時に社会の願いである。子どもたちが心身ともに健やかに成長するためには、「どこで過ごすか(養育の場)」だけでなく、「何をしてどのように過ごすか(養育の内容・方法)」が大切な問題である。養育には保育と教育の両方の視点が含まれていなければならない。家庭では親は特に意識して使い分けているわけではないが、子どもを守り世話をする保護的側面と、やがて社会で生きていくことを見通して自立のトレーニング(しつけなど)を積み上げていく教育的側面とを合わせて子どもと接しているはずである。親に代わる第三者が養育する場合も、この両方の機能が重要である。子育て支援には、親がこの養育の責任を果たせるようにサポートすること、親ができない場合は社会が代わってきちんと養育することが求められている。 【格差への対処】 養育を社会が引き受けることは格差への対処にもつながる。経済状況による家庭の格差が広がり、十分な教育機会を得られなかった子どもが成長して満足な職に就けず生活苦が続くという貧困の連鎖も問題となっている。どの家庭に生まれるかは宿命であり、子どもは選ぶことはできない。また、貧困やしつけが不十分な状況は子どもの責任ではない。日本に生まれた子どもは、どのような家庭の子どもであっても、一定水準以上の養育を保障される社会のセーフティネットが必要である。 br> |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
参考文献 ・大島まな「子育て支援を核とした人材育成と地域づくり−『養育の社会化』時代の『地域の教育力』を問う−」日本生涯教育学会年報第35号、2014年 |
|||||||||||||
『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。 |
|||||||||||||
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved. |