生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年4月24日
 
 

助産師の生涯学習 (じょさんしのしょうがいがくしゅう)

continuing education of midwives
キーワード : 助産師、生涯にわたる専門的な学習、動機づける要因
松村恵子(まつむらけいこ)
3.動機づける要因の特徴からの考察
  
 
 
 
   助産師の生涯にわたる専門的な学習を動機づける要因の特徴から考えられることを述べる。
 第一に、看護学生では,助産師志望の動機では母性看護学の担当教員の関わりが、助産師への関心を持つ起点となり看護モデルとなる。また,実習の現場で出会う助産師の実物大の働く姿そのものが、憧れとなり仕事への関心を深め,助産師選択の意志や行動に繋がっている。このことから、看護基礎教育課程でどのような看護教員や助産師、そして学習の機会に出会ったかが影響することが示唆された。たとえば,実際に授業が始まった頃の学生は「母性看護学は難しい、とっつきにくい」と話しているが、3回目ぐらいになると「難しいけれど面白い」と話すことが多い。学生が学問的関心を深め学びを実感できるように、モデルを示す専門職業人として一層の努力を続けていくことが大切と考える。
 第二に、達成目標傾向、能力・努力観,学習方法、自己教育力の動機づけ要因では、自分の能力を高めたい等、自己成長志向を持っている。いくら能力があっても努力して磨かなければ意味がないと考え、努力の成果が直ぐに現れなくてもそこから得るものは大きい等、能力は多様と捉えている。解らない事があれば自分で調べようとする等、プログラム・発見学習方法を選択している。
 これらのことから、自分がやり始めたことは最後までやり遂げたい等、目標達成に向けて自己教育力を育てる傾向性にあることが示唆された。助産師として生涯にわたり専門的な学習を継続することは、自己の責任であり義務と考え、努力しようとする姿勢が内包されていると考える。わが国では、看護師資格を取得してから次の水準で助産師資格を取得することが法的に義務づけられ、開業権を持ち助産師自らの診断に基づいて業務を遂行しその行為を独占することが認められている。
 したがって、助産師教育課程では、自ずと助産師業務のすべてを主体的に展開し、自律した専門職業人を育成する。この育成過程では、その適性があるかどうかを問う厳しさがあり、この厳しさに立ち向かって生きる姿勢が希薄だと助産師に到達することは困難になる。この教育課程の在り方は大きく影響していると考える。
 第三に、助産師業務の自己評価では妊婦・胎児・産婦・新生児・褥婦が対象の実践について自己評価が高い反面、性教育・婚前・新婚学級の企画、運営、評価や,思春期の電話相談、未婚女性の健康相談、不妊治療者と遺伝相談者への対応などの自己評価が低い実態が明らかになった。今日、十代の人工妊娠中絶,若年者の妊娠や性感染症が増加していることや、人々の健康増進,次世代育成支援の観点から、助産師は女性の健康支援だけではなく、家族及び地域社会の中にあっても重要な役割を持っていると考える。今後さらに、一人ひとりの助産師が主軸となって、組織力を強化し、行政や中学校・高等学校等の教育機関や、家庭や地域、保険医療機関との協働と連携を深め、ネットワークを構築し、一丸となって一層主体的に取り組むことが重要と考える。少子高齢社会において、あらゆる現象の加速化が進む中で、生命について考え,いのちを育む術を,一人ひとりが創造的に生きる術を,継承していく術を,ゆったりと『問う』必然性に迫られているように思われる。どのようにして、知ること・為すこと・他者とともに生きること・いのちを育む人間として学ぶかが重要課題と考える。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。
<トップページへ戻る
 
       
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved.