生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2012(平成24)年3月20日
 
 

生涯学習推進の効果 その3 (しょうがいがくしゅうすいしんのこうか そのさん)

キーワード : 講座等受講者率、学習率、地域指標、効果分析、相関係数
浅井経子(あさいきょうこ)
2.地域指標と学習内容別講座等受講者率、学習率との関係
 
 
 
 
  【地域類型別にみた地域指標と学習内容別講座等受講者率の相関】
◆ボランティア活動率と講座等受講者率の関係(表3)
 45道府県の場合、「職業関係」を除きいずれも正の相関がみられる。相関係数では因果関係の確定は難しいが、講座等受講者が増えるとボランティア活動が盛んになると考えた方が逆の関係よりも自然である。しかもその傾向は「教養関係」「趣味関係」等の講座等にも当てはまる。
◆参考:県財政の人件費割合との関係(表4)
 45道府県では「体育関係」「指導者養成研修」を除き負の関係が比較的強くみられる。
◆犯罪率(100人当たりの刑法犯認知率)との関係(表5)
 45道府県の場合「体育関係」を除きいずれの学習内容でも負の相関が高くなっている。地域類型別では、高齢化「低」の府県の「指導者養成研修」や高齢化「中」の道県の「体育関係」で負の相関がみられ、他の学習内容でも値は小さいものの相関係数は負の値となっている。この場合も犯罪率が講座等受講者率に影響を与えているとは考えられないため、講座等受講者率がアップすると犯罪率は低下する傾向があるとみることができる。
◆参考:県財政の警察費割合との関係(表6)
 この場合も刑法犯認知率とほぼ同様の傾向がみられる。
◆受給対象者1人当たりの老人医療費(表7)と県財政の老人医療費割合(表8)の関係
 はっきりした傾向はわからないが、あえていえばいずれの地域類型でもほとんどの学習内容で負の相関がみられる。
◆1勤労者世帯当たり実収入(表9)と中高年者就職率(表10)との関係
 前者についてはほとんど関係がみられない。後者については、45道府県では「教養関係」や「市民意識関係」の領域等を中心に講座等受講者が多いと中高年者就職率もアップする傾向がみられる。
◆参考:1人当たりの県民所得(表11)と県財政(行政)の財政力指数(表12)
 45道府県の場合いずれも負の相関になっており、地域レベルの経済的効果にほとんど寄与していないことがわかる。
【地域指標と学習内容別学習率の関係】
◆ボランティア活動率との関係(表13)
 講座等受講者率の場合とは正反対に、ほとんどの学習内容で負の相関がみられ、学習率の高い地域ではボランティア活動率は低下する傾向がみられる。特に「全体」「健康・スポーツ」等で負の値が大きくなっている。
◆刑法犯認知率との関係(表14)
 この場合もほとんどの学習内容で講座等受講者率とは逆の傾向がみられる。
◆受給対象者1人当たりの老人医療費(表15)と県財政の老人福祉費割合(表16)との関係
 前者の場合、「趣味的なもの」「育児・教育」で学習率がアップすると老人医療費がわずかに低下する傾向がみられる。しかし「健康・スポーツ」の学習がよく行われる地域の方が老人医療費はアップしており、これだけでは説明がつかない結果になっている。また老人福祉費割合と「ボランティア関係」の学習率との相関係数は-0.515となっている。
◆1勤労世帯当たり実収入(表17)と中高年者就職率(表18)との関係
 前者の場合、正の相関が0.4以上のところは「育児・教育」の領域だけである。しかし中高年者就職率との関係では、「ボランティア関係」や「自然体験等」「健康・スポーツ」で相関係数は0.5以上の値になっている。
◆参考:1人当たりの県民所得(表19)と県財政(行政)の財政力指数(表20)との関係
 前者では「趣味的なもの」「職業上の知識技術」で相関係数が0.4以上となっており、後者の場合は「教養的なもの」「趣味的なもの」「職業上の知識技術」の相関係数が0.4以上となっている。
 添付資料:表3〜20
 
 
 
  参考文献
・浅井経子「生涯学習推進の効果に関する分析−ボランティア活動率、投票率、犯罪率への社会教育費の効果−」日本生涯教育学会論集28、平成19年7月。
・浅井経子「地域指標との関連からみた生涯学習支援と生涯学習の構造−生涯学習推進の効果分析を通して−」日本生涯教育学会論集28、平成20年9月。
・浅井経子「生涯学習推進計画立案のためのガイドライン作成に向けて」日本生涯教育学会論集32、平成23年9月。
・浅井経子「生涯学習推進の効果・その1、その2」(平成21年8月登録)、『生涯学習研究e事典』平成21年8月。
 
 
 
 
 



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