生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2012(平成24)年3月20日
 
 

生涯学習推進の効果 その3 (しょうがいがくしゅうすいしんのこうか そのさん)

キーワード : 講座等受講者率、学習率、地域指標、効果分析、相関係数
浅井経子(あさいきょうこ)
3.地域指標と学習内容の関係
  
 
 
 
   次に、各地域指標に対して、学習内容別にみた講座等受講者率と学習率が地域指標とどのような位置にあるかをみてみることにしよう。図5〜図10は地域指標別に地域指標と学習内容別の講座等受講者率、学習率との関係を示したものである。横軸は地域指標と講座等受講者率の相関係数を、縦軸は地域指標と学習率との相関係数を示している。
 講座等受講者率のデータと学習率のデータとでは学習内容の分類が若干異なっているので、ここでは両者が比較的共通している学習内容を取り上げた(表21を参照)。
 ボランティア活動率との関係をみると(図5)、講座等受講者率、学習率ともにボランティア活動の活発化に寄与しているのは「市民意識」の学習となっており、当然といえば当然ともいえるであろう。前述したように、公的機関・施設等の講座等受講者率の場合はいずれでもボランティア活動率と正の相関があるが、学習率の場合は「市民意識」を除いては負の相関を示している。
 1人当たりの刑法犯認知率との関係をみると(図6)、この場合も「市民意識」の学習は公的機関・施設等の講座等受講者率、学習率とも負の相関となっており、地域の安全・安心に寄与する傾向がみられる。参考までに、県財政の警察費割合との関係をみると(図7)、「市民意識」や「家庭・育児」で、講座等受講者率も学習率も負の相関を示している。
 受給対象者1人当たりの老人医療費との関係では(図8)、「趣味」が特に学習率で老人医療費をやや抑制する傾向を示しており、県財政の老人福祉費割合との関係では(図9)、「市民意識」や「教養」が特に学習率で老人福祉費割合を抑制する傾向を示している。
 中高年者就職率との関係についてみると(図10)、ほとんどの学習内容で講座等受講者率、学習率ともに正の相関がみられる。特に「市民意識」の学習でその傾向がはっきりみられる。
【まとめ】
 ほとんどの学習内容で、地域指標と講座等受講者率との関係は地域指標と個人学習等も含めた学習率との関係とは全く異なる様相を示している。公的機関・施設を中心とした講座等での学習は何らかの意味で地域づくりに寄与している面があり、他の学習機会とは違った教育力を有しているのかもしれない。もしそうであれば“公共性”の意味を検討する上での重要な鍵が潜んでいるように思われる。両者の違いについて、今後さらに探る必要がある。
 学習内容別でみると、地域の活性化、安全・安心、中高年者就職率、健康等の全般に関わって何らかの意味がありそうな領域は「市民意識」であることがわかる。また、財政難の今日、「教養関係」や「趣味関係」の学習に公費を投入することはとかく批判されがちであるが、公的機関・施設の講座等の場合それらの学習は地域の活性化や安全・安心に、さらに「教養関係」の講座等では中高年者就職率にもそれなりの効果がありそうである。
なお、相関係数を使っての分析の場合、前述の通り相関係数では因果関係は特定できず、見かけの相関を示していることも考えられ、その解明は今後の課題である。 添付資料:表21、図5〜10
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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