生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2011(平成23)年9月22日
 
 

大学における社会人対象公開授業の実践 (だいがくにおけるしゃかいじんたいしょうこうかいじゅぎょうのじっせん)

キーワード : 社会人対象公開授業、大学公開講座、市民開放授業、社会人教養楽部
佐久間章(さくまあきら)
1.札幌国際大学「社会人教養楽部」の概要
  
 
 
 
   札幌国際大学が実施する正規学生との共学による正規授業開放型の公開講座(公開授業)は、平成18(2006)年度の「社会人教養講座」がそのはじまりである。地域貢献の一環として、市民の生涯学習活動を支援するための学習機会の提供を目的とするものであった。初年度(2006年)は、年間21科目を開放し、延べ37名が受講。翌年(平成19(2007)年)は、開放する授業科目を110科目に広げたこともあり、延べ167名の社会人が学生と一緒に授業を受けている。
 この2年間の実践を通して、公開授業の今後の方向を検討するための問題や課題について、次のことを確認した。一つは、受講者の多くは、受講者間及び学生との交流や自主活動を望んでいること。二つは、社会人対象の公開授業は、授業の中に社会人が入ることによって、学生・教員に効果が期待されること。三つは、リスク回避のための対策を講じること。特に、健康・安全については、特段の配慮が必要であること。以上のことを踏まえ、これまでの「社会人教養講座」を、学習集団の組織化を視点とした「社会人教養楽部(がくぶ)」へと平成20(2008)年度に発展的に改称することになった。
 平成20(2008)年度の受講者数は、223名であり、前年度の社会人教養講座の受講者数(112名)に比べ倍増している。2年目となる平成21(2009)年度の受講者数も、261名で、前年度比約2割増加している。さらに、3年目となる平成22(2010)年度は、前年度比約5割増加し受講者数408名と飛躍的に伸びている。平成22(2010)年度の受講者の概況をみると、年代別には、60代(43%)が最も多く、次いで50代(28%)、40代(13%)、70代(12%)となっており、50代以上が全体の85%を占めている。
 札幌国際大学の公開授業は、開放科目(正規学生の授業科目から開放可能な科目をリスト)の中から、希望科目を選択し、1科目7,500円で受講するというものである(受講科目数の制限はない)。正規学生の授業であることから、原則毎週1回全15回の授業を学生と同じ教室で同じ時間に受講することとなる。
 公開授業の運営は、地域連携および地域貢献を所管する大学付属機関である北海道地域・観光研究センター(以下、センター)が行っている。センターの位置するフロアーの一角には社会人教養楽部専用の情報スペースを設け、授業にかかわる連絡事項をはじめ学内外で開催される多彩な講座・イベント案内等の生涯学習関連情報の提供も行っている。その他、図書館やレストラン等の学内施設も自由に利用することができる。
 札幌国際大学の公開授業の取組が他大学と大きく異なる点は、学習機会の提供のみならず受講者間の交流促進とネットワークの構築を図るために、受講者の代表者からなる運営委員会を組織し、授業外の行事の企画・実施などに自主的に取り組んでいることである。各期の授業開始前に実施する「受講相談会(説明会)」の準備、会場設営、受付、受講相談は、今や完全に運営委員の手で行っている。さらには、受講者を対象とした自主事業の企画実施に際して、開催チラシの作成や関係機関・講師との連絡調整、当日の運営等も行っている。
 こうした運営委員会の活動は、当初、担当職員の介入なしには成り立たなかったが、今では以前ほどの介入の必要もなく、完全な自主運営に向けての萌芽を十分に確認することができるようになった。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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