生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2015(平成27)年1月1日
 
 

放課後児童クラブにおける体力・耐性向上プログラムの効果 (ほうかごじどうくらぶにおけるたいりょく・たいせいこうじょうぷろぐらむのこうか)

キーワード : 放課後児童健全育成事業、家庭教育支援、教育的プログラム、生きる力、欠損体験の補完
大島まな(おおしままな)
1.放課後の子どもをめぐる問題と背景
  
 
 
 
   学童期の放課後は、健全な成長・発達のために大切な時間であり空間である。特に家庭教育の欠けがちな放課後児童クラブ(学童保育)の子どもを対象に、日常の遊びと生活に教育的視点を加味したプログラムを開発・実施し、その教育効果を検証したが、背景には次のような状況がある。
【「欠損体験」補完プログラムの不足と「生きる力」の課題】
 子どもの「生きる力」の育成が教育の課題となっている。現代社会においては子どもを取り巻く環境、生活や遊びも変化し、子どもの健やかな成長・発達に必要な体験の多くが日常生活から失われている。しかしながら、子どもの「生きる力」を育成するのに大切な体験であるならば、意図的にプログラムとして提供する必要がある。発達上大切であるにもかかわらず生活の中で欠如している体験(欠損体験)には、自然体験、異年齢集団体験、自発的活動体験、勤労体験、困難体験、欠乏体験、共同生活体験などが考えられる。それらの体験を補完するために、社会教育では通学合宿や施設を活用した集団宿泊体験、自然体験、ボランティア活動、放課後子ども教室等の体験プログラムを実施しているが、多くは希望する一部の子どもがたまに参加するものであり、頻度や継続性においても十分とは言えない。より多くの子どもが、日常生活の中で繰り返し体験できる機会が求められている。
【家庭教育支援の視点とプログラムの欠如】
 男女共同参画が国の重要課題となり女性の社会参画が進む中、少子化にもかかわらず社会的保育のニーズは増加している。学童期の子どもを持つ母親の多くが就業しており、父親の家事・育児参画時間の少ない現状では、親が家庭において子どもと接する時間は少なくなる傾向にある。保育としつけが欠けがちになるおそれがあるということであり、多くの家庭が教育的補完を必要としていると言える。そのような中で、「家庭の教育力」低下の問題がさまざまに指摘されている。女性に更なる社会参画を求めながら、十分な支援がないままに、他方で(主として母親に)「家庭教育を怠るな」というのは無理がある。保育等の充実、家庭教育を補完するプログラムが求められている。「社会全体での子育て」がうたわれてはいるものの、支援方法や補完プログラムの開発はニーズに追いついていない。
【縦割り行政による保育と教育の分業】
 子どもの健やかな成長・発達には保育機能と教育機能の両方が必要であるにもかかわらず、福祉と教育の行政区分上の役割分担によって、福祉の「放課後児童健全育成事業」のプログラムは、世話や保護を中心とする保育を主眼としており教育的な視点が欠けている。また、学校や社会教育の幼少年プログラムは、保育との分業を理由に、養育の社会化や子育て支援にあまり関心を示さず、放課後児童クラブを応援する発想は乏しい。これまで放課後子どもプランなどが提案されても、部分的な連携はみられるが保育と教育の一体的な実現は難しかった。しかしながら放課後児童クラブに潜在する教育的可能性は大きい。指導日数は長期休暇や土曜日を含むので学校をはるかに超えており、工夫次第で学校教育や家庭教育を補完することが可能になる。
 
 
 
  参考文献
・三浦清一郎・大島まな「青少年教育キャンプの組織化と教育効果の研究―3か年研究のまとめ」日本生涯教育学会年報 第8号、1987年
・大島まな「家庭教育支援の本質に関する考察―きめ細かな家庭教育支援をめぐって」生涯学習・社会教育研究ジャーナル 第3号、2009年
・三浦清一郎・大島まな『明日の学童保育―放課後の子どもたちに「保教育」で夢と元気を!』日本地域社会研究所、2013年
 
 
 
 
  



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