生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年1月8日
 
 

教育基本法と生涯学習 (きょういくきほんほうとしょうがいがくしゅう)

the Fundamental Law for Education and lifelong learning
キーワード : 教育基本法の改正、生涯学習の理念、中教審答申、生涯学習社会、教育振興基本計画
山本恒夫(やまもとつねお)
2.教育基本法の中の生涯学習
 
 
 
 
  【字義】
 これは、平成18(2006)年12月の改正で初めて教育基本法に生涯学習が取り入れられたことを意味している。
【説明】
 改正された教育基本法には、新たに次のような「生涯学習の理念」加えられた。
第3条 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。
 これは旧教育基本法にはない条文である。この条文の根拠は、中教審答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」(平成15(2003)年)の「時代や社会が大きく変化していく中で、国民が、その生涯のいつでも自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価されるような社会を実現することが重要であり、このことを踏まえて生涯学習の理念を明確にする」という生涯学習社会の実現についての提言にある。
 この答申では、さらにその説明として「社会が複雑化し、社会構造も大きく変化し続けている中で、年齢や性別を問わず、個人一人一人が社会の様々な分野で生き生きと活躍していくために、学校教育修了後も引き続き職業生活に必要な新たな知識・技術を身に付けたり、あるいは社会参加に必要な学習を行うなど、生涯にわたって学習に取り組むことが不可欠となっている」と述べている。
 平成15(2003)年の中教審答申では、生涯学習社会を「国民の誰もが生涯のいつでも、どこでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができその成果が適切に評価されるような社会」としているが、教育基本法第3条では「成果が適切に評価されるような社会」を「成果を適切に生かすことのできる社会」に置き換えている。これは、条文に評価を入れると評価のみが一人歩きするおそれがあるので、それを避けたためで、学習成果を適切に生かすには成果を示す資料としての評価が必要であるから、そのことを含めてこのような表現にしたものである。
 このような生涯学習社会の実現には、トータル・システムとしての教育・学習システムのサブ・システムとして、教育・学習機会等の選択援助システム、教育・学習機会等の提供システム、学習成果の認定・認証・活用支援システムが必要である。
 第1の教育・学習機会等の選択援助システムは、多くの教育・学習機会等の中から必要に応じて教育・学習機会等を選択する際の支援を行うもので、学習情報提供、学習相談の仕組みの整備が課題である。
 第2は教育・学習機会等の提供の仕組みで、学校教育、社会教育などの教育・学習機会、教育・学習コンテンツの提供システムを整備していく必要がある。
 第3の学習成果の認定・認証・活用支援システムは、学習成果を適切に生かすための資料となる修了証・単位・免状・資格等の付与、互換、転換等の認定・認証を行い、個々人の学習成果の社会的な還元、地域での活用支援、ボランティア活動支援を行うものでものである。この場合、認定・認証は希望者のみへ行うものであることに注意する必要がある。
 
 
 
  参考文献
・中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興 基本計画の在り方について」(平成15(2003)年3月20日)
・山本恒夫「参考人意見陳述」、参議院教育基本法に関する特別委員会 会議録第七号(平成18年12月1日)
・山本恒夫『21世紀生涯学習への招待』協同出版、平成13年
 
 
 
 
 



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