生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2013(平成25)年4月27日
 
 

イギリスの「資格・単位枠組み」 (いぎりすの「しかく・たんいわくぐみ」)

キーワード : 全国共通資格枠組み、イギリス連合王国、資格・単位枠組み、ヨーロッパ共通資格枠組み、能力認証制度
柳田雅明(やなぎだまさあき)
1.イギリス連合王国における経緯と概観
  
 
 
 
   イギリスでは、能力認証に関して全国共通となる枠組み(national qualifications framework)が、学位や職業資格を横断して設定され、すでにそれが所与のものとして機能している段階であるといえる。
 さて、ここで言う「資格」とは、何か。それは、一定のことを行うために必要とされる条件や能力に対して、個人単位で認証することで固定化して通用させようとするものである。そして、「資格」とここで言うときイギリスにおける原語は、qualificationである。それは、「予選を通過する」という意味の動詞qualifyを名詞化したものである。いわば入学や就職の際にいわば本戦進出の条件、すなわち書類選考における判定基準となる。したがって、学歴や修了証書や技能検定さらには免許などの「組織的に固定化された評価(およびその証明書類)」がみな含まれることになる。
 そして全国共通の枠組みとは、「資格」に関する到達度水準を国・地域共通で設定したものである。
 イギリスの「資格・単位枠組み」へと至る政策上の取り組みが始まるのは、1986年である。同年7月中央政府が、職業技能に関する全国共通到達度枠組みを、各業界横断して設定するという政策方針を打ち出した。それは、民間任せであったイギリスの職業能力認証に関して、政府が歴史上初めて国策として関与することであった。
 それより前には、「資格」が基本的に自由意思任せで多種多様に設定されてきたため、秩序だった整理や理解が困難な「資格ジャングル」と言われる状況に陥っていた。学校においても、職業能力開発の現場においても、「資格」に関する情報が、整理されない錯綜する形で入ってきていた。さらには、既習得の「資格」を活用して新たな資格を取得しようとしても、学習の重複を強いられがちとなった。そこで、共通の準拠基盤を設けることで、これらの問題を解決することが期待されることとなったのであった。
 ところが、イギリスでは、後期中等教育修了かつ大学入学者選考での「黄金のスタンダード」とされるGCE-Aレベルや大学学位などの「学術資格(academic qualifications)」ばかりに威信があり、職業系の資格の地位が低いと言わざるを得なかった。そこで、現場で発揮される力量を認証する資格を、威信ある「学術資格」と対等とすべく、それらの水準に合わせて設定した。それが、NVQ (National Vocational Qualifications, 全国共通職業資格)であった。そして、NVQに設定された5つの水準に合わせた全国共通の資格枠組みが、政策推進に際して使用されることとなった。
 現在イギリスの「資格・単位枠組み」は、4つの地域(nations)に対応する形で3つ存在する。イングランドと北アイルランドに共通の「資格・単位枠組み」、スコットランドの「スコットランド単位・資格枠組み」および「ウェールズ単位・資格枠組み」である。そして、ヨーロッパ連合(EU)の「ヨーロッパ共通資格枠組み」のもと、国内の資格・能力認証制度も摺り合わせ、各国間の互換流通性を高めようとしている。
 
 
 
  参考文献
・European Union. 2011. Referencing National Qualifications Levels to the EQF. European Qualifications Framework Series: Note 3. Luxembourg: Publications Office of the European Union.
・柳田 雅明. 2004.『イギリスにおける「資格制度」の研究』多賀出版
 
 
 
 
  



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