登録/更新年月日:2011(平成23)年1月1日 |
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日本生涯教育学会が30周年を迎えた平成21(2009)年は、設立当時とは時代は大きく変化している。ここでは生涯学習推進システムの構築と、平成16(2004)年3月の中教審審議経過の報告「今後の生涯学習の振興方策について」で示された「個人の需要と社会の要請のバランス」「人間的価値と職業的知識・技術の調和」「継承と創造」の生涯学習振興方策の基本的方向の観点から生涯学習政策の30年間を振り返ることにする。この3つの方向は当時の中教審生涯学習分科会長の山本恒夫・本学会常任顧問により提案された。 本学会の設立当時(昭和55(1980)年)、生涯教育は教育政策を方向づけるものとして期待されていた。昭和56(1981)年には中教審が「生涯教育について」を答申し、昭和59(1984)年に設置された臨時教育審議会は生涯学習体系を提起し、昭和63(1988)年には文部省の社会教育局が改組され生涯学習局が筆頭局として発足した。本学会の生涯教育類型研究会が多次元尺度構成法を用いて47都道府県の生涯教育推進状況を3次元空間に示し、各方面に衝撃を与えたのは昭和59(1984)年のことである。 生涯教育はUNESCOにより垂直的次元と水平的次元の教育を統合するものとして提唱されたが、「統合」への取り組み方はそれぞれの国に任された。我が国が選んだのは、センターを要とする生涯学習推進システムの構築であった。文部省大臣官房企画室『地域社会における生涯教育について』(長期教育計画調査研究資料No.22、昭和56(1981)年3月)所収の山本恒夫「組織・体制の整備・充実」がそれを示しており、それが中央教育審議会答申「生涯教育について」(昭和56(1981)年)の「今後の課題」に反映されている。 中教審は答申「生涯学習の基盤整備について」(平成2(1990)年)で生涯学習推進システムの調整機能を果たすべく生涯学習推進センターの設置を提言し、答申「新しい時代に対応する教育の諸制度の改革」(平成3(1991)年)で「生涯のいつでも自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果を評価するような生涯学習社会を築いていくことが望まれる」として、学習機会選択援助システム、学習機会提供システム、学習成果の評価システムの3つのサブシステムを有する生涯学習社会像を打ち出した。 生涯学習推進システムの一つのモデルを示したものに、平成6(1994)から平成8(1996)年に文部省(当時)で研究開発が行われた生涯大学システムがある。都道府県の生涯学習推進センターを核に、上記の3つのサブシステムや学習成果の活用システムを取り入れたもので、県民カレッジ等として全国に波及した。しかし、学習成果の評価が奨励的評価の域を出ず、学習成果を活用に結びつける決め手を欠き、また生涯学習推進センターが調整機能を果たすことは実際には難しかった。 一方、混沌としていた生涯学習推進行政と社会教育行政との関係に決着をつけたものが、平成10(1998)年の生涯審答申「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」であった。その中で「社会教育行政は生涯学習振興行政の中核として、学校教育や首長部局と連携して推進する必要がある」と述べている。しかし、生涯学習と社会教育の概念の混乱は中教審答申等で幾度となく整理されてきたにも関わらず収まることがなく、生涯学習振興行政と社会教育行政の違いについての議論は未だ続いている。 br> |
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参考文献 ・浅井経子「生涯学習政策30年と日本生涯教育学会」日本生涯教育学会年報30号、平成21年。 ・日本生涯教育学会生涯教育類型研究会『都道府県の生涯教育調査』昭和59年。 ・山本恒夫「生涯教育のシステム化」日本生涯教育学会年報創刊号、昭和55年。 ・山本恒夫『21世紀生涯学習への招待』協同出版、平成13年。 ・文部省生涯学習局『地域における生涯大学システムの整備について』平成9年 ・伊藤康志「生涯大学システム」日本生涯教育学会『生涯学習研究e事典』。 |
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