生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2010(平成22)年11月12日
 
 

大学教育ボランティアによる教養教育と世代間交流 (だいがくきょういくぼらんてぃあによるきょうようきょういくとせだいかんこうりゅう)

general education supported by volunteers for university education from the local community and intergenerational communications
キーワード : 大学教育、ボランティア、教養教育、世代間交流、知の循環型社会
大橋眞(おおはしまこと)
2.学びのコミュニティ
 
 
 
 
   学びのコミュニティは、学生、地域社会人、教員が同じテーブルについてお互いに学び合う学習グループである。大学教育に一般の地域社会人が大学教育ボランティアとして関わる仕組みとして、「学びのコミュニティ」を形成して授業を進めることが有効であることが明らかになってきた。一般の授業では、教員が主役となり教員が学生に一方的に話すことが多くなる。学生は脇役として聞き役に回ることが多く、受動的な態度で授業に臨むことになる。社会人が大学の授業に関わる場合、専門的知識のある社会人が教員の代わりに講師役になることはあるが、一般の社会人は授業に関わる場合には受講生側になることから、聞き役の立場である受講生として参加することになる。このような日本の大学で一般に見られる教員から受講生への一方通行の知識の伝達ではなく、お互いに意見を出し合いながらある特定のテーマについて議論を進めていくという形式の授業の中で構成されるコミュニティを「学びのコミュニティ」と称している。
 このコミュニティの中では、お互いに対等な立場で意見を出し合うことを原則としている。このような場において意見を出す積極性が必要であるために、学生は能動的な形で授業に参加することになる。また、地域の社会人と対話をすることにより、大学の教室内で地域と関わることが出来る。また、大学教育に対して造詣の深い社会人の教養に接することにより、教養の意義について体験的に感じることができる。また、ボランティアという形式で大学の授業に関わる主体的な生涯学習者として社会人を見ることから、生涯学習の意義についても知る機会になる。大学入学以前から受動的な立場で授業に参加してきた学生にとって、知識はあったとしても会話の中で積極的に使う機会が無かったために断片的な存在であった知識が、このような授業において社会人などから出される意見により、個々の知識の間の関連性が見いだされることがある。また、授業での積極的な関わりを目指すというモチベーションが授業の課外学習に対する積極性を生み出す効果が期待出来る。
 参加する社会人や教員が、他の社会人が対等な立場で授業に参加出来るように、自分の専門分野の経験を語るのではなくて、一般の社会人として関わることを原則としている。このことにより、社会人と学生が、教員とほぼ同じ立場において議論をすることが可能となる。授業は、お互いに対話をすることを基本として進められるために、社会人の発言が授業の成否に関わることもある。教員は、このような授業を円滑に進めるためのコーディネータ役として、学生から意見を引き出すことや、社会人の発言を適正な方向に誘導する役割を担う。このような授業では、参加する学生、社会人及び教員のコンビネーションにより、授業にふさわしいテーマや進行方法などを工夫する必要がある。また、メンバー構成に応じて、お互いに議論が成立しやすいようなテーマの設定が重要である。
 
 
 
  参考文献
・大橋 眞、中恵真理子、光永雅子、Steve T. FUKUDA、斎藤隆仁、菊池 淳、香川順子、廣渡修一「大学教育改革と教養教育-地域社会人活用による知の循環型社会構築に向けて」-『大学教育研究ジャーナル』 6号、2009、pp88-97
 
 
 
 
 



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