登録/更新年月日:2007(平成19)年4月19日 |
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【定義】 現代の世界の指導的な教育・学習の理念である生涯学習は、すべての人々に対し生涯にわたる学習機会を提供しようとする政策である。とくに、現代の激しい社会変動と未来の知識主導の社会への対応が、政府(地方自治体を含む)の財政危機のもとにあって、生涯学習の経済・財政施策(支援)に求められる。 【説明・動向】 1)生涯学習に経済・財政施策(支援)が求められる現代的背景 急激に変動する現代社会にあっては勿論、現代から未来への知識主導の社会へ向けては、生涯にわたって教育・学習が求められる。すなわち、知識主導の社会は、教育・訓練の差が経済格差を生みやすく、情報通信技術の進歩とひろがりによって「情報リッチマン」と「情報プアマン」が発生しやすい。その結果、デジタル・デバイド(新しい排除)を生んでいる。その解決のためには情報通信技術などの新しい知識や技術の学習が求められる。 このような社会的格差・不平等の拡大に加えて現代社会において進行している家庭や地域の細分化や精神的つながりの希薄化は、社会秩序やモラルの喪失につながりかねない。そのためには横断的な生涯学習である学校・家庭・地域それぞれの連帯感の醸成と三者の連携・融合を図る学習が求められる。しかし、政府(地方自治体を含む)の財政は危機状態で、生涯学習の財政的保障はできにくくなり、新しい経済・財政施策が提案されている。 2)学習機会の体系的整備の観点(評価基準)について 生涯学習の学習機会の体系的整備における基本的な目標は、教育・学習サービス(学級・講座等)の能率的な供給と学習機会に恵まれない人々に配慮した費用負担の公平化を図ることにある。 【事例・課題】 生涯学習の経済・財政施策(支援)として次のような方策や事例をあげることができる。 1)財政支出分野 従来から政府(地方自治体を含む)の政策上の必要から財政支出が行われ、支援してきた。(例:「学級・講座」) 2)税制分野 生涯学習参加者に対して租税を軽減する方策(例:「教育減税施策」)が基本であるが、近年、新たに「教育税」を創設して財源を集める方策が提案されている。 3)金融(貸付)分野 生涯学習参加者は、その費用は受益者負担が原則であるが、負担能力のない者には資金を貸与し、その学習が終了してから、定められた期間に返却する方策。(「貸費制奨学金」) 4)補助金分野 義務教育以後職業訓練を受けたい人々に対し補助金を支給する方策(例:「給費制奨学金」) 5)貯蓄分野 政府(地方自治体を含む)と民間とで第3セクター機関をつくり学習参加者の援助行う方策や教育訓練が受けられる方策(例:「学習口座」) 6)保険分野 勤労者に対する学習機会を、社会保険の一部として拠出した資金を非勤労時に使うことにより保障しようとする方策(例:「教育保険制度」) 7)雇用(労働)分野 企業と被用者(労働者)の合意のもと、就業中に休業となることによって教育訓練が受けられる方策。(「就業休業制度」) これからの施策・支援の方向は、公的な財源を増やす教育税制度を設け、それを補うものとして学習のための貯蓄や保険などを制度化すべきであろう。 br> |
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参考文献 ・池本美香「生涯学習の費用負担に関するOECDの論議の動向」日本生涯教育学会報第24号、2003年 ・OECD:1996,200,2001,2003,2004各年報 ・井内慶次郎監修、山本恒夫・浅井経子編著『生涯学習〔答申〕ハンドブック−目標・計画づくり、実践への活用―』文憲堂、2004年 |
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