生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

オーストラリアの生涯学習支援 (おーすとらりあのしょうがいがくしゅうしえん)

promotion of lifelong learning in Australia
キーワード : 知識社会化、社会的公正、オーストラリア資格体系、成人・コミュニティ教育、大学
出相泰裕(であいやすひろ)
3.大学における社会人学生支援
  
 
 
 
   オーストラリアの生涯学習の重要な特色の1つは大学の果たしている役割である。特に正規の学位課程への成人の受け入れという点では、オーストラリアは1987年の経済協力開発機構(OECD)の報告書によって最も成人に開かれたグループに位置付けられた。2004年度でみると、学士課程への入学者のうち、25歳以上は近年減少傾向にあるとはいえ、22%を占めており、一方、博士課程を除く大学院段階は増加傾向で入学者の57%が30歳以上となっている。2004年もしくは前年の2003年に中等教育を修了して学士課程以下の課程に入学してきた伝統的学生は三分の一程度にすぎず、逆に既に高等教育課程に入学した経験がある者が四分の一いる。その他は社会人特別選抜試験に合格した者、TAFEカレッジから編入した者、職業経験を評価されることによって入学を果たしている者らによって占められている。
 このようにオーストラリアの高等教育機関は成人に対して開かれているが、その原因の一つに大学が社会人学生の受け入れに向けて様々な施策を展開していることがある。例えばその一つに橋渡し課程(bridging course)がある。これは大学に入学したいが、学力的に不安がある人々向けの入学準備課程であり、そこでは基礎教科の教授や学習技能の向上が図られると共に、受講生の自己効用感の向上や入学以前に学生生活や大学教育についての理解を促進することも意図されている。
 またオーストラリアの大学では学生の学習形態もそれぞれの事情を反映して多様となっている。オーストラリアの大学生のうち、伝統的なフルタイム学生は63%にとどまり、その他は登録単位数が少ないパートタイム学生や通常キャンパスに通う必要の無い遠隔教育課程の学生、およびそれらの混合方式を取っている学生である。
 社会人学生は職場や家庭での責務も抱えており、また多くが長年にわたり学校教育を離れていたため、学業を継続していくことは決して容易ではない。そこでオーストラリアの大学の中には、モナシュ大学やラ・トローブ大学においてのように、社会人学生組合が学生に対して様々な支援を行っているところもある。それらの組織は社会人学生が学業と他の様々な責務との両立を図れるように支援することを目的に存立しており、一般的に社会人学生経験者がスタッフとして、社会人ラウンジ内で支援活動を行っている。
 具体的な支援策としては、第一に社会人学生間の交流促進がある。これは社会人学生が孤独を感じないように、休憩時間に学生同士が知り合えるようにラウンジを開放したり、パーティーを開催したりするものである。第二は学生の大学生活に対する支援である。様々な問題を抱える社会人学生に対し、スタッフは随時相談を受けつけており、必要であれば適宜学内の適切な部局を紹介している。また保育が必要な学生に対しては、ラウンジの掲示板で保育ボランティアを募集している。社会人学生向けにニューズ・レターも定期的に発行しており、必要な情報を提供している。第三は学習支援である。学生の中には特定の教科や特定の学習技能に関して不安を抱えている者もいる。そこで学生からの要望などを踏まえ、論文の書き方やパソコンの使用方法など基礎的な技能の開発に関するワークショップを企画したり、その分野が得意な学生を紹介したりしている。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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