登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
|
|||||||||||||
(1)生涯発達のとらえ方 発達とは、白井(1968)が指摘しているように、人が生まれて死ぬまでの心身の構造や機能に生ずる漸新的・連鎖的変化を表す概念である。個体が発生して環境に適応しながら、死に至るまでの身体的、運動的、情緒・欲求的、認知的、社会的側面の変化過程でもある。発達(development)の関連語には、成長(growth)、成熟(maturation)等がある。発達を規定する要因は個人が生得的にもつ素質(成熟)と生後に与えられた環境(学習)の相互作用で発達が形成される。 これまでの発達理論は、乳幼児期・児童期・青年期に関心が寄せられ、加齢に伴い成人期や高齢期は発達が減退・衰退する老化過程ととらえられてきた。平均寿命が延び健康な高齢者の増加や、高齢期の精神発達の研究成果から、生涯発達(life−span development)というとらえ方が見直されるようになった。 (2)生涯発達心理学 バルテス(Baltes,P.B.,1980)は生涯発達心理学(life-span developmental psychology)について、人の誕生から死にいたるまでの生涯過程の中でに個人内の変化と安定性・連続性がどのように存在し、そこにどのような異質性と類同性があるかを明らかにすることであると定義づけている。このバルテスの理論である「発達心理学」イコール「生涯発達心理学」という考え方については、東洋他編『生涯発達の心理学』(3巻、新曜社、1993)に詳しいので参照されたい。人は生涯変化し発達し続ける存在だという認識が重要である。個人や高齢者集団の豊かな暮らしを保障する生涯学習社会づくりは、生涯教育環境の整備により実現することができる。 (3)発達段階と発達課題 発達段階(developmental stage)の区分としては、胎児期、新生児期、乳児期、幼児期、児童期、思春期、青年期、成人期、老年期等があり、学校教育制度の区分としては、就学前、小学校、中学校、高校、短大・大学の期間がある。この他には歴史を経た人間の経験知から生み出された習慣や習俗の中には,生育に伴う行事として三日湯、御七夜、宮参り、お食い初め、初誕生、七五三の祝い、成人式等があり、高齢期の長寿を祝う習わしには還暦、喜寿、米寿、白寿等がある。 人間が社会的存在である以上,社会の側から各発達段階に応じて発達を遂げ学習する課題が期待される。この一連の課題をハヴィガ−スト(Havinghurst,R.)やエリクソン(Erikson,E.H.)は発達課題(developmental task)とよび、各年齢段階の課題を明らかにした(「青年期の理解と学習」参照)。 br> |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
参考文献 ・エリクソン,E.H. (1959)、小此木啓吾訳『自我同一性〜アイデンティティとライフサイクル〜』誠信書房、1973 ・ハヴィガ−スト,R.J. (1953)、荘司雅子訳『人間の発達と教育』牧書店、1958 ・白井常、八木冕編『心理学II』第9章発達、培風館、1968 ・東洋他編『生涯発達の心理学』3巻、新曜社、1993 |
|||||||||||||
『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。 |
|||||||||||||
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved. |