登録/更新年月日:2021年1月3日 |
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近年、「若年性認知症」と言われる人たちが、全国に3万人以上もいるとみられているが病気自体の因果関係がよくわからず当事者たちは「もっと病気の現実を知ってほしい」と訴えている。そして、「社会とのつながりを持ちたい」という思いを持つ彼等に対し、どのような支援が有効かという視点で、国もようやく対策に動き出した。これまでの例を見ると、もの忘れや言語障害などの症状がでる認知症の方が、18〜64歳で発症したケースが最も多い。厚生労働省の研究統計によると、若年性認知症の患者が全国で3万人を超える一方で、65歳以上の高齢者で介護保険の要介護認定を受けた認知症患者は、推計で149万人にものぼると言われている。 私は近年、「甲州市塩山市民病院(山梨県)」や「金沢医科大学病院(石川県)」などで、入院している患者さんを対象に、音楽による療法活動を展開している。特に子どもの頃に口ずさんだ「学校唱歌」は、歌詞が美しい言葉で綴られており、その穏やかなメロディーは人の心に深く浸透し、心地よい刺激が脳に伝わるようである。私が以前、能登半島にある「国立能登青年の家」という青少年教育施設に勤務していた時、文部省の科学研究費からの奨励事業の支援を受け、「近代教育の発展期における学校唱歌による人格形成の効用について」の命題で考究したことがある。その中で、人間には自らが歩んできた時代を回想しながら、その多感な幼少年期に学んだ思い出深いメロディーを聴くことで、人それぞれに多彩な追憶の場面が鮮やかに甦り「生命(いのち)」に躍動感を与えるものだということを、身をもって体験したのである。人間の頭脳の中は一千億個程の神経細胞で構成されており、それが互いに響き合って生命の躍動が活発になるようである。とりわけ学校で習った唱歌には、短い詞文ではあるが穏やかで情緒あふれる日本語で綴られておりその言葉を心地よいメロディーで反芻することによって脳細胞の中にすり込まれていき、年老いてもその曲を聴きながら口ずさむことにより、かつて若かりし頃の元気だった生命力が鮮烈に甦ってくるのである。 br> |
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参考文献 ・北本福美「老いのこころと向き合う音楽療法」(音楽之友社)2002年 |
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