登録/更新年月日:2006(平成18)年11月27日 |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
|
|||||||||||||
交渉問題に関するゲーム理論を参考にして、コーディネートの手順の基本形を示すことにしよう。 1)コーディネート機能の種類を確定する。 行うべきコーディネートが前項に示したコーディネート機能{(マッチング,企画・設計)∞調整}のうち、いずれのものであるかを確定する。 2)当事者(対象)を確定する。 コーディネートの対象として、学習者、生涯学習関係機関、施設、団体などが考えられる。コーディネートの対象をここでは当事者とよんでいるが、その範囲を確定する必要がある。当事者をpとすると、 p={p1,p2,……pn} とあらわされる。当事者が多い場合には、当事者をタイプ分けしてpの数を少なくし、何回か繰り返してコーディネートの手順を踏むとよいであろう。 3)実現可能な条件の範囲を探る。 当事者のニーズ等をよく聞き、当事者が合意できる条件等の範囲を探る。条件が、例えば費用のように連続値の場合には幾つかの段階に区切る。 4)すべての当事者に条件別のメリット値rを出してもらう。メリット値とは、当事者それぞれのその条件にについての期待値や評価値を意味している。 5)個々の当事者の利害を超えて、地域の生涯学習推進上の目的等に関わる場合などには、中立的な立場からその目的に照らしたネットワークとしてのメリット値を出してもよいであろう。 6)コーディネートの基準点を設定する。基準点としては、合意に至らなかった場合の、いいかえれば現状についてのメリット値などがあげられる。したがって、それぞれの条件についてのメリット値は、基準点をもとに出してもらうことにする。基準点を現状とすれば、現状に対してそれぞれの条件の評価はどうかでメリット値を検討することになる。 7)上記の5)のメリット値を基に、それぞれの条件ごとの組のメリットの大きさを示すメリット積を算出する。メリット積とは次の通りである。 各組のメリット積=rp1・rp2・・・rpn ただし、積であるので、rの値が0や負にならないように操作しなければならない場合もある。なお、積を算出したのは、メリット値には当事者の主観が入らざるを得ないので、メリット値の尺度は当事者によって異なると考えたからである。 8)合意点を探る調整では、当事者とネットワークにとってそれ以上改善の余地のない組を選ぶようにする。これはゲーム理論の「交渉問題」でのパレート最適性の公準にあたる。それは、メリット値が最大値となる組である。また、メリットやデメリットは当事者間で偏在しないようにしなければならないが、急を要している当事者がいれば、その当事者には譲歩の余地があると考えることができる。 9)合意点を探る際には、基準点以上のメリット値を当事者とネットワークに保証するように努める。これはゲーム理論の「交渉問題」での個人合理性の公準にあたる。ただし、すべての当事者にそれを保証できるとは限らないため、基準点を下回る当事者がいた場合には、その当事者に対しては他の面で何らかの補充を行う必要があり、新たな観点でのコーディネートを行うことになる。 br> |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
参考文献 ・浅井経子「生涯学習支援者に求められる技術の開発」日本生涯教育学会年報25号、平成16年。 ・浅井経子「生涯学習領域におけるコーディネート機能とその手法開発」淑徳短期大学研究紀要第40号、平成13年。 ・鈴木光男『ゲーム理論入門』勁草書房、平成6年。 ・鈴木一功監修『MBAゲーム理論』ダイヤモンド社、平成11年。 |
|||||||||||||
『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。 |
|||||||||||||
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved. |