生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2005(平成17)年9月14日
 
 

学習成果の評価と認証 (がくしゅうせいかのひょうかとにんしょう)

evaluation and certification of lifelong learning
キーワード : 学習評価、学歴(学校歴)、生涯学習社会、互換・累積加算、評価換算基準
篠崎明子(しのざきあきこ)
1.学習成果の評価
  
 
 
 
  【定義】
 学習成果の評価とは、ある一連の学習が修了したときにその全体を評価対象として行われる他者評価のことであり、目標の達成度を判定する行為や、その判定結果を指す。
【説明】
 中央教育審議会答申「新しい時代に対応する教育の諸制度の改革について」(平成3(1991)年)においては「学習成果の評価とは、学習目標をどの程度達成したかを確かめるために、情報や資料を集めてその達成度を判断することであり、評価の仕方には、自己評価と他者による評価がある」と述べられている。しかし現在、一般的には、生涯学習における学習評価のうち、ある程度の学習のまとまりについての他者評価が学習成果の評価とよばれる。ただし、日常言語では、漠然と生涯学習における学習評価のことを指していたり、自己評価を含めて学習成果の評価としたりすることもある。
 生涯学習における学習評価は自己評価が原則とされる。しかし、学習者が学習成果を社会に示すための資料として学習評価を利用するときには、客観性が求められることが多いため、他者の論理的判断による評価が望ましいとされている。また、最近では、学習したことを社会的に評価してもらいたいという人もかなりみられる。
 学習成果の評価の例として、各種資格、検定試験による評価、講座等の修了証、単位などがある。評価の際には、知識や技能の他、学習時間などが評価項目となることもある。
 学習成果の評価の重要性については、臨時教育審議会「教育改革に関する第一次答申」(昭和60(1985)年)、同「教育改革に関する第三次答申」(昭和62(1987)年)などに見られるように、過度の受験戦争などの弊害を引き起こす原因の一つである学歴偏重の風潮を是正するという観点から論じられてきた。いつ、どこで学んでも、学習成果は適切に評価されるべきであり、そのために学習成果を評価する多様な仕組みの整備が必要とされたのである。
 近年では、生涯学習審議会答申「学習の成果を幅広く生かす−生涯学習の成果を生かすための方策について−」(平成11(1999)年)に見られるように、学習者が社会で学習成果を活用する際に評価を資料とするという観点からも学習成果の評価の重要性がいわれている。
 学習成果の評価にあたっては、評価を強制的に行わないこと、学習機会の提供や学習成果の活用とは切り離して行うこと、人物評価を含めないことなどの原則を守ることが求められている。
 学習成果の評価の機能には次のようなものがある。
・学習者の学習の励みになったり、学習者を勇気づけたりする。
・学習計画・学習プログラムの改善に役立つ。
・学習者が職業上の選択をしたり社会参加をしたりする際の資料として役立つ。
・社会や企業等が人材を採用したり活用したりする際の資料として役立つ。
【課題】
 学習成果の評価の中には、資料としてあまり活用されていないものや活用時に不便なものも多い。評価を活用しにくい理由として次のようなことがいわれている。
・評価の社会的な認知度が低い。
・評価されたことによる社会的な意味・位置づけが明確でない。
・評価の活用できる範囲が限定されていることがある。
・評価が断片的であり、まとまりを欠いている。
 これらの問題を改善するために、学習成果の評価の互換・累積加算や認証の仕組みを構築することが課題となっている。
 
 
 
  参考文献
・山本恒夫『21世紀生涯学習への招待』共同出版 2001年
・浅井経子編著『生涯学習概論』理想社 2002年
・臨時教育審議会「教育改革に関する第一次答申」1985年
・臨時教育審議会「教育改革に関する第三次答申」1987年
・中央教育審議会答申「新しい時代に対応する教育の諸制度の改革について」1991年
・生涯学習審議会答申「学習の成果を幅広く生かす−生涯学習の成果を生かすための方策について−」1999年
 
 
 
 
  



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