登録/更新年月日:2009(平成21)年9月13日 |
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現在私は、その唱歌の生い立ちの時代的背景など当時の人々の暮らしの様子を語りながら、かつて一世を風靡した朝顔型の「手巻き蓄音機」で聴いていただいているが、いつの間にか場内が大合唱となり、戦後日本の混乱期に隆盛を極めた「歌声喫茶」のような熱い雰囲気に包まれてしまうこともしばしばである。この講座に参加された方の中では、体が不自由なため車椅子で来られたあるお年寄りは、涙を浮かべ「今の物の豊かな時代に生きる幸せと、手厚い看護の有難さ」をしみじみと感じ感動している様子がひしひしと伝わってきて、私も日頃からこの活動には、積極的に参画し喜びを共感しているところである。 先日、この様子が地元の新聞やテレビ番組でも大きく取り上げられ、このような活動が「音楽療法」の一環としてマスコミから注目され始めたことは、誠に喜ばしい限りである。 ところで、先般、文化庁から「(親から子、子から孫へ)親子で歌いつごう日本の歌百選」が発表された。これらの美しい日本の抒情歌は、今や現代に生きる私たちに遺してくれた先人からの貴重な贈り物である。これは、私たちが子どものころ口ずさんできた学校唱歌の歌詞の中にも、日本の故郷の美しい情景と畏敬の念、そしてここに暮らす人々のきめ細やかな心情として歌い継がれている。ここで、例えば文部省唱歌の名曲、「故郷」を皆で声高らかに歌ってみようではないか。 【故郷】 一 兎(うさぎ)追いしかの山、 小鮒釣りしかの川、 夢は今もめぐりて、 忘れがたき故郷(ふるさと)。 二 如何(いか)にいます父母、 恙(つつが)なしや友がき、 雨に風につけても、 思い出(い)ずる故郷。 三 こころざしをはたして、 いつの日にか帰らん、 山はあおき故郷。 水は清き故郷。 * 作詞:高野辰之,作曲:岡野貞一 (大正3(1914)年,文部省唱歌,尋常小学唱歌集) *** 古来、日本人はこの歌詞にあるように、父母への敬慕の念、友への思いやりなど、情緒てんめんとした美しい言葉でつくられた日本人の心の歌を歌いつつ、日々の生活の中でそれを実践してきた。いま教育の場で、このようないつまでも心に残る学校唱歌がなぜ歌われないのか、日本人として一抹の寂しさを覚えるのは私だけだろうか。「仰げば尊し」、「旅愁」などの歌にも麗しい日本人の心情が綴られている。この曲が創られた時代は、いわゆる「いじめ、不登校、学級崩壊」といった現象とは無縁の世相であった。しかし、昨今の我が国は、これが日本の出来事かと耳目を疑うような事件が頻発している。かつて日本人は、勤勉で人情味の豊かな民族であり、しかも教育、交通、通信、医療、治安、生活文化(衣・食・住)などあらゆる分野で世界に冠たる国であると諸外国の方々から高い評価を受けており、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われたこともあった。近年、この神話が崩壊し、日本人としての誇りと栄光が失われつつあるように思えてならない。今こそ日本人の心の再興を図る時期を迎えたと言っても過言ではない。 私はこれからも先人たちが遺してくれた珠玉のような美しい言葉をモチーフにして、地域の方々と共に「身も心もリフレッシュ」な日々を過ごしたいと考えている。 br> |
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参考文献 ・文化庁編「〜親から子、子から孫へ〜 親子で歌いつごう日本の歌百選」(東京書籍)平成19(2007)年 |
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