登録/更新年月日:2012(平成24)年12月29日 |
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公共図書館は、国民の生涯学習を推進する有力な社会教育施設であり、昭和25(1950)年の図書館法の制定以来、住民に必要とされる図書館をめざして努力してきた。その歴史を振り返ると、1990年代までは貸出中心サービスによって発展してきたが、2000年代以後は、貸出サービスに加えて、課題解決支援サービスに取り組んできた。この動きは、まだ一部にとどまるが、着実に広がりつつあり、公共図書館に対するイメージの変化が生じている。 昭和25(1950)年に図書館法が公布され、公共図書館の無料制度が規定されたことは画期的なことであった。しかし、当時の公共図書館のイメージは、「学生が勉強する座席を提供する施設」であり、それは1960年代まで続いた。 1960年代から1970年代にかけて、貸出サービスと予約サービスが積極的に取り組まれた。『市民の図書館』(1970)は、「公共図書館の基本的機能は資料を求めるあらゆる人に資料を提供することである」と述べ、利用者が求める資料を確実に提供する公共図書館のイメージを定着させた。 1980年代後半から90年代まで、好景気と相まって、市町立図書館も含めて、図書館施設の規模が増大した。他方、昭和55(1980)年に京都市図書館で公社委託が始まり、公共図書館職員の間では将来に対する危機感が生じた。これらのことから、中堅の職員や研究者の間で、公共図書館の改革が必要であるという認識が広まってきた。 1990年代に入り、社会教育分野でも、社会の様々な課題の解決のための学習機会の充実をめざす考え方が生まれた。平成4(1992)年の生涯学習審議会答申「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について」では、「社会の急激な変化に対応し、人間性豊かな生活を営むために、人々が学習する必要のある課題」を現代的課題と呼び、成人については、「積極的に現代的課題に関する学習機会の充実を図ることが必要である」と指摘している。他方、公共図書館では、従来不十分であったレファレンスサービスの充実を求める提案があり、レファレンス専用デスクを設置して住民の調べもの支援に本格的に取り組む図書館が増加した。この時期には、先進的図書館で、課題解決支援に取り組むための物的環境とサービスの基盤が整備されたといえる。 1990年代末には、公共図書館関係者の危機感は一段と高まり、図書館改革の具体的な行動が始まった。2000年前後から、ビジネス支援、行政支援など特定の主題や人々を対象とするサービスが、先進的な公共図書館で積極的に取り組まれ、提唱されるようになった。 これらの実践を受けて、 平成18(2006)年には、これからの図書館の在り方検討協力者会議から『これからの図書館像〜地域を支える情報拠点をめざして〜(報告)』が発表された。この報告書は、この間の実践の成果をもとに、課題解決支援サービスとそのための図書館経営の在り方を体系的に解説して、その実現を提言しており、大きな影響を与えた。 これらの取り組みと報告によって、公共図書館の役割の一つが、地域や住民の課題解決に必要な情報の提供にあることが明らかになり、「地域や住民に役立つ図書館」「生活と仕事を支援する図書館」というイメージが定着してきたといえる。 br> |
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参考文献 ・ 日本図書館協会『市民の図書館』日本図書館協会、1970、10頁 ・ 薬袋秀樹「読書案内サービスの必要性(前編)」『図書館雑誌』、88-6、1994、401-405頁 ・これからの図書館の在り方検討協力者会議『これからの図書館像〜地域を支える情報拠点を めざして〜(報告)』文部科学省、2006、62頁 |
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