生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

青少年とボランティア活動 (せいしょうねんとぼらんてぃあかつどう)

youth and volunteer work
キーワード : 青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等について、教育改革国民会議、ボランティアコーディネーター、事前学習、山形方式
佐久間章(さくまあきら)
1.説明、青少年のボランティア活動の意義
  
 
 
 
  【ボランティア活動の理念と青年の活動率】
 ボランティア活動とは、(1)人々の参加や不参加の自由意思を尊重する自発性・主体性、(2)活動の成果を労働の対価や給与的報酬として換算したり求めたりしない無償制・非営利性、(3)個人の利害を超えて、共同体の利益のために寄与する公共性・公益性などを基本の理念としている。活動分野は、社会福祉、教育、文化、スポーツ、自然環境保全、保健医療、国際交流・協力、人権擁護、平和、まちづくり分野などの多岐にわたり、NPOを支える原動力ともなっている。
 日本の青年のボランティア活動についての意識を、内閣府が、平成15(2003)年に日本を含む世界の5カ国の青年を対象に実施した第7回『世界青年意識調査』によると、活動経験の有無については、平成12(1998)年実施の前回調査と比べると「以前、したことがある」の22.2パーセントが31.7パーセントに増え、「全くしたことがない」の74.7パーセントは63.2パーセントに減っている。これは、多様なボランティア活動が全国各地で展開され、ボランティア活動に対する社会的な支援策・振興策が充実してきていることで、青少年のボランティア活動は着実に広がりつつあることをみることができる。
 しかし、一方では、「現在、活動している」については、アメリカ(21.0パーセント)が最も高く、以下、スウェーデン(19.9パーセント)、韓国(5.0パーセント)、ドイツ(8.2パーセント)で、日本は3.3パーセントにとどまっている。
【青少年のボランティア活動の意義】
都市化や核家族化・少子化等の進展により、地域の連帯感、人間関係の希薄化が進み、個人が主体的に地域や社会のために活動することが少なくなっている。個人と社会との関わりが薄らぐ中で、青少年の健全育成、地域の医療・福祉、環境保全など社会が直面する様々な課題に適切に対応することが難しくなっている。このような社会状況の中にあって、個人や団体が地域社会で行うボランティア活動やNPO活動など、互いに支え合う互恵の精神に基づき、利潤追求を目的とせず、社会的課題の解決に貢献する活動が、従来の「官」と「民」という二分法では捉えきれない、新たな「公共」のための活動とも言うべきものとして評価されるようになってきている。
 こうした状況の中、青少年の時期には、学校内外における奉仕活動・体験活動を推進する等、多様な体験活動の機会を充実し、豊かな人間性や社会性などを培っていくことが必要である。特に、青少年が社会奉仕体験活動、自然体験活動、職業体験活動など様々な体験活動に取り組むことは、他人に共感したり、自分が大切な存在であり、社会の一員であることを実感したり、思いやりの心や規範意識をはぐくむことができる。また、広く物事への関心を高め、問題を発見したり、困難に挑戦し解決したり、人との信頼関係を築いて共に物事を進めていく喜びや充実感を体得し、指導力やコミュニケーション能力をはぐくむとともに、学ぶ意欲や思考力、判断力などを総合的に高め、生きて働く学力を向上させることができる。さらには、こうした体験を幼少期より積み重ねることで、自立的な活動を行う原動力となることも期待され、このような体験を通じて市民性、社会性を獲得し、新しい「公共」を支える基盤を作ることにつながるものである。
 
 
 
  参考文献
・中央教育審議会『青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等について(答申)』平成14(2002)年7月
・内閣府『第7回世界青年意識調査』平成16(2004)年1月
 
 
 
 
  



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