生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2012(平成24)年12月11日
 
 

看護専門職者の生き方の構造 (かんごせんもんしょくしゃのいきかたのこうぞう)

キーワード : 看護専門職者、アンドロジニー、自己実現、看護基礎教育、継続教育
石原留美(いしはらるみ)、松村惠子(まつむらけいこ)
1.看護専門職者の自己実現に向けたアンドロジニーな生き方
  
 
 
 
   平成22(2010)年末現在、看護師の総就業者数は約99万5千人と年々増加し、100万人に近づく勢いである。そのうち、5.4%は男性看護師であり約5万4千人が就業している。2年前の調査から増加率を見てみると、男性約16.6%、女性約7.2%と特に男性看護師の躍進は目覚ましい。就業場所においても、病院では精神科をはじめ、内科・外科を問わずあらゆる診療科の病棟や手術室、人工透析室、そして介護老人保健施設や訪問看護ステーションなど活躍の場を広げている。
 個人の価値観が多様化しつつある今、生命を育み、支え、慈しむためには看護専門職者の男性と女性が共に存在し、援助を幅広く選択できる環境づくりは必要不可欠である。従来「白衣の天使」や「ナースキャップ」などで看護師が象徴されてきたように「看護は女性の職業」であるという社会通念を見直し、高度専門職業人としての自己実現が望まれる。そのためには、看護専門職者自身が社会的性役割にこだわらない豊かな選択肢を持ち、その人らしく一人の人間としてしなやかに生きていくことが重要と考える。
 性役割に関する発達研究を行ってきたBemは、社会が期待する男性像や女性像にとらわれるのではなく、両者のパーソナリティ特性を兼ね備えた〈心理的両性具有性(psychological androgyny)〉が望ましい人間像であり、心理的健康や社会的適応力を高めると考えた。また福本はアンドロジニーな生き方について、男らしさ・女らしさという性にまつわる観念は勿論のこと、それに留まらず、無意識のうちに抱いている様々な先入観・価値観などから解き放たれて〈一個の人間として、その人らしく自由に生きること〉であると述べている。
 看護専門職者の男性と女性がアンドロジニーな生き方をするということは、自分らしさを自由に表現できる主体として、自己の法則にしたがって自律的に生きていくことである。その生き方に柔軟性や多様性をもたらし、個人のもつ可能性を最大限に表現できる自己実現に向かって生きていくことを意味するのである。
 
 
 
  参考文献
・日本看護協会出版会編『平成23年看護関係統計資料集』、2012.
・Sandra Lipsitz Bem「THE MEASUREMENT OF PSYCHOLOGICAL ANDROGYNY」Bulletin of JORNAL OF CONSULTING AND CLINICAL PSYCHOLOGY、42、1974.
・福本俊「Androgynyな生き方尺度の提案」日本家政学会誌、59(10)、2008.
 
 
 
 
  



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