生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2012(平成24)年12月11日
 
 

看護専門職者の生き方の構造 (かんごせんもんしょくしゃのいきかたのこうぞう)

キーワード : 看護専門職者、アンドロジニー、自己実現、看護基礎教育、継続教育
石原留美(いしはらるみ)、松村惠子(まつむらけいこ)
2.看護専門職者の男性と女性におけるアンドロジニーな生き方の構造
  
 
 
 
   看護専門職者の男性においては、表面上は公私を問わず課題を達成し、役割を演じ、成功させようという一見、自己実現的なアンドロジニーの≪課題達成志向≫による行動をしているが、根本的には男性としての≪性役割志向≫に価値をおいた生き方をしていることが考えられる。
 このような男性としての生き方のなかで看護専門職者の男性は、男らしさを発揮しなければならないという義務感をもちながら職務を全うしている。このことは当然のことながら様々な場面において、看護専門職者としての援助の質を低下させ、方法の選択肢を狭め、本来の自分らしさが表現できていないと考えられる。例えば、がんの末期患者の思いを傾聴する場面において、看護専門職者の女性では涙を流し、共感的態度で寄り添うという看護は女らしさと合致しており、自然とみなされることが多い。一方で看護専門職者の男性においては、男らしさと反するため、自分自身も厭わしく思い、看護の対象者からも疎まれる可能性があると判断して、寄り添うことをあきらめてしまうことである。
 次に、看護専門職者の女性においては、自分自身に対しては≪性役割に対する抵抗志向≫を持ち、社会が期待する女らしさにとらわれない≪自分らしさ志向≫で≪役割使い分け志向≫を取り入れたアンドロジニー的な柔軟な生き方をしているが、他者に対しては≪性役割期待志向≫の行動を望んでいるということである。
 看護専門職者の女性においては、看護師としてまた母親として、妻としてなど複数の役割をしなやかに切り替えながら、自分らしさを失うことなく遂行していると考えられる。しかし一方で、他者に対しては≪性役割期待志向≫の行動を望んでいる。社会的性役割が期待されている現代社会では、社会が期待する「女らしさ」と「自分らしさ」の間で役割葛藤を感じていることが推測される。自分らしさを大切にすることと、他者のその人らしさを大切にすることは、全く別の事ではなく、自分のことを慈しみ、愛し、大切にできる人は、他者にも同様、慈しみ、愛し、大切にすることができるのであり、成熟したアンドロジニーな生き方が望まれる。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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