登録/更新年月日:2006(平成18)年10月26日 |
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近年、子どもが被害者になったり加害者になったりする殺傷事件が跡を断たない。平成9(1997)年の神戸市のA少年の猟奇的な事件は世間を震撼させ、今なお記憶に新しい。平成16(2004)年の佐世保の小6年生少女による殺人事件。平成17(2005)年には、15歳少年による東京板橋区の両親殺害事件。同年の福岡での中3年少年による兄の殺人事件等々挙げれば切りがない。また、幼い子どもが変質者によって暴行を受け、殺害される痛ましい事件も多発している。子どもを取り巻く環境は、言語に絶する程悪化している。 学校の荒廃も続いている。文部科学省(以下「文科省」)の発表によれば、平成17(2005)年度に全国の公立小・中・高等学校で起きた校内暴力の件数は、中学校では対前年比でほぼ横ばい、高校では微増であるが、小学校では6.7%増の2.018件と3年連続で過去最多を更新している(平成18(2006)年9月発表)。その内訳を見ると、「対教師」が38.0%と増え際立っている。 一方、いじめは小・中・高等学校全体で2万143件と対前年比7.0%減と2年連続の減少である。ただ、平成18(2006)年10月に北海度滝川市の小6少女の自殺が、実は1年程経ていじめによることが明らかになるなど、いじめは、統計数字以上に深く潜行しているのかも知れない。 不登校の児童・生徒も文科省の学校基本調査速報(平成18(2006)年8月)によれば、小・中学生とも減少傾向にあるが、それでも中学生は9万9.546人と36人に1人が不登校である。 このように、地域社会や学校で子供たちが被害者や加害者になったり、様々な問題行動が跡を断たないのは何故であろうか。諸々の要因が輻湊して、明確にそれを指摘するのは極めて困難であろう。家庭や地域の教育力の低下、教師の指導力の不足等もその要因の一つに挙げることも出来るのであろう。あるいは、岡田尊司著「脳内汚染」で指摘しているように、子どもたちがゲームやネットに長時間熱中しているためなのかも知れない。 このような問題を別な角度から考える上で参考になるデーターがある。それは、川村学園女子大学子ども調査研究チーム(代表 斎藤哲瑯教授)が行なった「子どもたちの体験活動等に関する調査研究」である。 それによれば、今の子どもたちは極端に遊ばない。中学生にいたっては50%以上が「殆んど遊ばない」と答えている。遊ぶ相手も同じクラスの子が圧倒的に多く、小6年で92.1%を占め、近所の子とは25.0%しか遊んでいない 遊ぶ場所も自分の家や友達の家が50%以上を占め、逆に自然の中で遊ぶ子どもは、自然が豊かに残っていると思われる郡部の子どもでさえ6.6%と極端に少ない。 このようなデーターからは、遊びの天才といわれる子どもらしい闊達な姿は見えてこない。子ども達を家から追い出し、地域の中で異年齢の子どもたちと触れ合う機会を積極的に提供することを真剣に考えなければならない。その一つとして子ども会がある。今こそ、その活動の大切さを見直し、ゲームやネット漬になっている子どもを外に連れ出し、友達や自然との触れ合いの楽しさを知ってもらうことが喫緊の課題になっている。 br> |
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参考文献 ・河野重男他『新社会教育事典』第一法規、昭和58年 ・『社会教育の歩みと現状』文部省社会教育局、昭和55年 ・伊藤俊夫『生涯学習・社会教育実践用語解説』(財)全日本社会教育連合会、平成14年 ・『子ども会白書』(社)全国子ども会連合会、平成15年 ・『子どもが主人公の場作りと親へのサポート事業』(社)全国子ども会連合会、平成16年 ・『子どもたちの体験活動等に関する調査研究』川村学園女子大調査研究チーム、平成16年 |
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