生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2009(平成21)年9月1日
 
 

子どもの読書の意義 (こどものどくしょのいぎ)

キーワード : 読書の意義、子どもの発達、読書に期待される効果、読書の効果
鈴木佳苗(すずきかなえ)
1.読書の意義と目的
  
 
 
 
   読書の意義は、国の一連の読書活動推進の取組の中で次のように捉えられている。平成12(2000)年の教育改革国民会議報告では、「人間性をより豊かにするために、読み、書き、話すなど言葉の教育を大切にする」ことが提言されている。また、先述の「子どもの読書活動の推進に関する法律」では、読書活動の意義は、「読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身につけていく上で欠くことのできないもの」と記されている。文化審議会の報告によれば、読書は、楽しく、知識が付き、ものを考えることを可能にするものであるとされる。国語力との関係では、読書は、国語力を形成している「考える力」、「感じる力」、「想像する力」、「表す力」、「国語の知識等」のいずれにもかかわり、これらの力を育てる上で中核となるものであるという。さらには、すべての活動の基盤である「教養・価値観・感性」などを身につけていくために不可欠なものであることも指摘されている。
 このような読書の意義の社会的認識に対して、家庭や子どもたち自身が読書の意義や目的をどのように捉えているのかについては、これまでにいくつかの質問紙調査が行われている。たとえば、幼稚園に通う児童の母親を対象とした質問紙調査(秋田・無藤, 1996)では、読み聞かせの意義・目的には、「文字・知識習得」(読み聞かせの結果として生まれる知的効果)と「空想・ふれあい」(読み聞かせの過程で生じる思考や情緒)という2つの側面があることが示されている。この調査では、
(1)「空想・ふれあい」がより重視されていた家庭は全体の7割以上にのぼり、約2割の家庭で「文字・知識習得」がより重視されていたこと
(2)このような家庭における読み聞かせの意義・目的についての認識の違いは、家庭における読書の違いに関係があること
も示されている。たとえば、読み聞かせの意義・目的として「空想・ふれあい」を重視する傾向は、読み聞かせ頻度の高さや読み聞かせ時間の長さとの関係が見られている。
 また、小・中学生を対象とした質問紙調査(秋田・無藤, 1993)によれば、読書の意義・機能には、「空想・知識」(読書の過程で生じる認知的な面)、「暇・気分転換」(読書の過程で生じる気分的な面)、「成績・賞賛」(読書の過程というよりも読書を行った結果についての意義)の3つの側面がある。この読書の意義・機能についての認識は、学年が上がると共に変化し、発達に応じて、読書の結果ではなく、過程に意味を見出すことができるようになることが示されている。
 
 
 
  参考文献
・秋田喜代美・無藤隆 「読書に対する概念の発達的検討:意義・評価・感情と行動との関連性」 『教育心理学研究』 Vol.41, 1993.
・秋田喜代美・無藤隆 「幼児への読み聞かせに対する母親の考えと読書環境に関する行動の検討」『教育心理学研究』Vol.44, 1996.
・鈴木佳苗 「読書活動への科学的アプローチ」 『学校図書館メディアセンター論の構築に向けて』(図書館情報学会編), 勉誠出版, 2005.
 
 
 
 
  



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