登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
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【定義】 QOL(Quality of Life)とは、「生活の質」と翻訳されている。Lifeの意味は、英語の辞書では生活、生命、生涯、暮らし、人生などと多義である。したがって、QOLとは単に生活を指すのではなく「人生の質」、「生命の質」という意味をも含む幅広い概念である。生活を物質的な面からのみでなく精神的面も含めて質的にとらえる考え方で、医療、看護、福祉、工学等の諸分野で用いられている重要な概念である。 具体的には、QOLは個人を取り巻くあらゆるものの質であり、個人の満足感、幸福感、快適さ、生きがい感等を規定する。QOLは「個人的状態」、「社会・環境条件」、「個人の意識構造」の3つの構成要素から成る。「個人的状態」は年齢、健康状態、生活の自立度、社会的地位、経済状況に関連していて、「社会・環境条件」は個人を取り巻く社会環境、自然環境条件を含む。「個人的状態」と「環境条件」は相互に作用し、影響し合い、「個人の意識構造」による評価を通して調節される。 この評価基準は、個人の帰属集団の価値規範、文化の影響を受けるため、同じ条件であっても、評価結果としての満足感、幸福感に差が生じ、個人特有のものとなり、個別性、多様性を持つ。さらに、「個人の意識構造」は、自己選択、自己決定、自己実現という自立の過程に関連する。この過程を優先し、保障するのが医療、福祉の基本的考えである。そのため、QOLの概念は人間の尊厳を守る意識に関連しつつ形成され、医療、看護、福祉、工学の分野で大切な概念となっている。 【高齢期のQOL】 高齢期にとってQOLがなぜ重要であり、そこには他世代と異なる要素があるのだろうか。高齢期は、人生の充実期として豊かに生きることを目指しつつ、一方では、加齢によるさまざまな障害が生じやすく、医療、看護・介護、福祉関連の支援を必要とする時期である。退職・引退という環境の変化に合わせて周囲の状況を改変してゆく立場や、生活機能の低下や健康の障害により、支援される立場となることは、自らの選択・決定による自分らしい生活を脅かされる状況に陥りやすい。そのため、高齢期のQOLを保障することは他世代と異なる特別な意味を持つ。 この時期のQOLの特性に関して、ノークロス(Norcross, J. C.)は、次の6項目をあげている。「健康(身体的・精神的)」、「独立性(経済的・人間的)」、「対人関係」、「組織活動への参加」、「宗教的信仰」、「環境(物理的・文化的)」である。この中で「健康」と「独立性」を最も重要な要素と指摘している。日本では岡村が「現在の心身の健康状態」、「家族構成や経済状態」などを高齢期のQOLの特性としてあげている。ノークロスの指摘する「独立性」と岡村の「家族構成や経済状態」に共通する概念は「自立」である。したがって、高齢期のQOLの構成要素のうち、「健康」と「自立」が最も重要な要素としてあげられる。 br> |
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参考文献 ・松田徳一郎、他編『リーダーズ英和辞典』研究社、1997年 ・岡村清子、長谷川倫子編『エイジングの社会学』日本評論社、1997年 ・古谷野亘「老化の社会学理論」、柴田博、他編著『老年学入門』川島書店、2001年 ・Norcross, J.C., Quality of Life of Older Adults, A Qualitative Study, U.M.I., 1990 ・池田秀男「高齢期の生涯学習支援哲学―理論図式の確立を目指して―」安田女子大学大学院博士課程開設記念論文集、1997年 |
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