登録/更新年月日:2011(平成23)年1月24日 |
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「朝の読書」には、若者を中心とした活字離れに歯止めをかけ、読書習慣の定着に効果があると期待されている。読書の教育的意義や教育効果については様々な言説があるが、「朝の読書」では、児童生徒の生きる力の育成や人間形成を目的とした実践に特色があり、1990年代以降、日本各地の小・中・高等学校に普及してきた。 「朝の読書」が1990年代後半から急速に広まっていった背景には、教育現場における草の根的な普及・啓発活動、朝の読書に関わる任意団体(朝の読書実践研究会,朝の読書推進協議会,全国朝の読書連絡会等)の設立、平成10年度に告示された学習指導要領の実施に伴い新たに設けられた「総合的な学習の時間」など様々な要因が考えられる。 文部科学省は,平成13(2001)年を「教育新生元年」として位置付けるとともに「21世紀教育新生プラン」の三本柱として“朝の読書運動”を取り上げた。国会では平成13(2001)年12月には「子どもの読書活動の推進に関する法律」が成立し,4月23日を「子ども読書の日」と定めた。また,平成14(2002)年1月,遠山文部科学大臣が「確かな学力の向上のための2002アピール(学びのすすめ)」を表明し,その中で「朝の読書」の実施を推奨した。「朝の読書」は、このような行政からの推進活動への後押しもあり,急速に全国に普及したのである。 現在の「朝の読書」及び4原則の提唱者である林公氏は、「朝の読書」の真のねらいを生徒の「生きる力」の育成、言い換えるならば「積極的な生徒指導」(すべての生徒が対象であり、個々の生徒をより望ましい方向に推し進めようとする指導)にあると捉えている。例えば、「朝の読書」の4原則では、「好きな本を」「ただ読むだけ」と示している。このことは、国語科における読書教育で見られる課題図書の指定や、読書感想文を求めることとは一線を画する点である。 「朝の読書」が広義の生徒指導であるのは、生徒指導の基本原理(1.個別的かつ発達的な教育を基盤とする、2.一人ひとりの生徒の人格の価値を尊重し個性の尊重を図りながら、同時に社会的な資質や行動を高めようとするもの、3.生徒の現在の生活に即しながら、具体的実際的な活動として進められる、4.全ての生徒を対象とするもの、5.統合的な教育である)と重なる点が多く、生徒指導の究極のねらい「自己指導能力」の育成と一致する点にある。 毎朝、自分の読む本を自己選択し、教師からの課題ではなく自己決定した本を自分の責任で一定時間読むという学習活動は、他の教育活動には見られない取り組みである。また、一人ではできないことも「みんなでやる」という集団の力(グループダイナミクス)により、無理なく達成できるという側面がある。さらに、誰もが取り組める時間設定により、「毎日やる」ことで読書習慣の形成を図れることが、多くの実践校から報告されている。このように「朝の読書」には、読書教育だけに止まらない生徒指導の機能が含まれていることが分かるのである。 br> |
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参考文献 ・林公編著『心を育てる朝の読書−10分間朝読書で、子どもが変わる、学校が変わる』 教育開発研究所、1999. ・林公『朝の読書の原点を求めて−生きる力を育む授業』メディアパル、2000. ・林公『朝の読書−その理念と実践』リベルタ出版、2007. ・薬袋秀樹「朝の読書にどう取り組むか」『教職研修』35(6,7,8,9,10),2007. ・薬袋秀樹「朝の読書の効果に関する議論について−林公氏の所説の分析」『日本生涯教育学会論集』31、2010. ・文部科学省『生徒指導提要』教育出版、2010. |
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