生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2011(平成23)年4月2日
 
 

ニュージーランドのウォーターワイズ (にゅーじーらんどのうぉーたーわいず)

Waterwise program in New Zealand
キーワード : ウォーターワイズ、水辺活動、安全教育、学校教育
青木康太朗(あおきこうたろう)
1.ウォーターワイズ(Waterwise)とは
  
 
 
 
  (1)ウォーターワイズの目的
 ウォーターワイズ(Waterwise)とは,水(water)に賢くなる(wise)という意味の造語で,ニュージーランドのオークランド市近郊にある小・中学校(50校)で選択科目として取り入れられている水辺活動プログラムのことである。このプログラムは,セーリングやカヤッキング等のウォータースポーツを通して,その楽しさや素晴らしさに気づかせながら水辺環境への理解を促し,環境を保護する意識や責任感を養うとともに水辺における安全教育(water safety)を行うことを主なねらいとしている。具体的には,以下の4つが目的として挙げられている。
(ウォーターワイズの目的)
@ 様々な水辺活動を通じて,セーリングやカヌーイング,カヤッキング,ローイングの技術を身につけさせ,自信を持たせる。
A それぞれの子どもたちに合わせて指導計画を作成することで,多様な子どもたちの興味や能力を引き出す。
B 水辺の危険について学習し,自分の能力の限界に気づかせることで,水辺環境についての理解を深め,水辺の楽しみ方を身につけさせる。
C ニュージーランドの海洋環境を守る意識や責任感をはぐくむ。
 また,ウォーターワイズ・プログラムを通じて子どもたちに様々な水辺活動を体験させることで,どのような社会環境の中でも生きていける態度や価値観をはぐくむことができると考えている(「資料1」図1を参照)。例えば,多民族国家であるニュージーランドおいて,ウォータースポーツを通じて様々な人種の子どもたちに互いに協力し,助け合う経験をさせることは,他者への気づかいや思いやり,相手の権利を尊重する価値観をはぐくみ,差別のない習慣や社会的な正義感を身につけさせることができるということである。
(2)ウォーターワイズの始まり
 1982年9月,オークランドのノースショアにあるミルフォード小学校の敷地内に,ニュージーランド初のウォーターワイズセンター「Pupuke Schools Waterwise Centre」(「資料1」写真1を参照)が設立された。
 ウォーターワイズの始まりは,急増する水難事故を減らすため,水辺における安全指導を行う草の根運動的な試みが始まりと言われている。筆者が,ニュージーランドに実地調査に行った際,ウォーターワイズの設立に携わったヨット協会(Yachting New Zealand)の副会長(当時)に設立の経緯を尋ねたところ,「当時,学校の体育にはグランドスポーツしかなく,ウィークデイでもセーリングができるよう体育の選択科目にマリンスポーツを取り入れてもらいたいと保護者から要望があり,それを受け,教育省(Ministry of Education)やヨット協会等が中心となってウォーターワイズ・プログラムを作成した。」とのことであった。
 現在,ウォーターワイズセンターは,オークランド市近郊に13施設(Pupuke,Torbay,French Bay,Okahu Bay,Howick,Western Bays,Devonport,Murrays Bay,Northcote / Birkenhead,Hibiscus Coast,Youth Town,Whangerei,Great Barrier)あり,各センターはヨットクラブや公民館,スポーツクラブによって運営されている。運営に関わる経費は,銀行や地元企業等のスポンサーからの寄付(「資料1」写真2を参照)や国やロトからの補助金,そして受講料(保護者からの寄付)で賄われている。 添付資料:資料1
 
 
 
  参考文献
・New Zealand Schools Waterwise HP,http://www.waterwise.org.nz/(2011年3月29日参照)
・青木康太朗,酒井哲雄,植木弥生「ニュージーランドにおけるウォーターワイズの現状とわが国の取り組み」,大阪府キャンプ協会研究紀要(2006年3月)pp30-37.
 
 
 
 
  



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