生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

社会教育主事の役割 (しゃかいきょういくしゅじのやくわり)

role of Social Education Officers
キーワード : 社会教育法、教育公務員特例法、専門的教育職員、専門的技術的な助言・指導、社会教育主事の専門性
坂本登(さかもとのぼる)
3.社会教育主事の専門性
  
 
 
 
   社会教育主事に関して、社会教育法は「専門的技術的な助言と指導」、教育公務員特例法は「専門的教育職員」などと、ともに条文に「専門的」の文言を盛り込んでいる。このことが、社会教育主事の専門性を問う根拠となっているが、この専門性についてはいまだ統一的な見解を見出せないまま、専門性論議が今日まで続いている。
 すでに前項で述べたとおり、社会教育主事の中心な役割は、住民の学習活動と直接的に関わるのではなく、間接的に関わるところにある。したがって社会教育主事の専門性もまた、当然、学習の条件整備ないし支援助長に関することとなる。こうした観点からの代表的な提案としては、日高幸男の3P・4P論と、小山忠弘の4C論がある。日高は、社会教育主事の専門性として、はじめプランナー(政策企画者)、プロデューサー(演出者)、プロモーター(推進者)の3P論(『社会教育』昭和47(1972)年5月号、全日本社会教育連合会)を提唱し、後にプログラマー(学習計画立案者)を加えて4P論としている。小山はコミュニティ・オーガナイザー(地域社会における組織者)、コンサルタント(診断・助言者)、コーディネータ(調整者)、カウンセラー(相談役)などの4C論(『社会教育』昭和59(1984)年10月号、全日本社会教育連合会)を提唱している。
 また、社会教育主事の専門性については、社会教育関係の答申等からも捉えることができる。その代表的なものが、昭和46(1971)年の「急激な社会構造の変化に対処する社会教育のあり方について」であり、ついで昭和61(1986)年の「社会教育主事の養成について」と、平成8(1996)年の「社会教育主事、学芸員及び司書の養成、研修等の改善方策について」である。これらのレポートをもとに社会教育主事の専門性を摘出し整理すると、伝統的に重要視されてきたものとしてはa.学習課題・ニーズの把握、b.社会教育(行政)計画の立案、c.学習計画の立案と運営、d.学習集団の組織化と活動支援、e.指導者の発掘・研修と活動支援などが挙げられ、生涯学習振興の観点からは新たにf.学習情報の提供と学習相談、g.生涯学習のコーディネートなどの役割が付加され、さらに、社会教育計画等との関係からはh.社会教育(行政)の評価も専門性から除外できない。
 しかし、社会教育主事が行政職員や公民館主事などを兼務する例が多く、しかも常態化する傾向にあり、このことが社会教育主事の専門性を構築するうえでの障壁となっている。この要因としては、社会教育主事が地方公務員として採用・任用された後に、人事異動により資格取得が必要となるケースが多いことが考えられる。学校教育ではありえないこうした社会教育行政の姿は、スタッフとラインの未分化と捉えるか、職務の性質上やむを得ないと捉えるか、議論の分かれるところである。しかも、兼務によるメリット、デメリットのとらえかたは、任命者と被任命者間で対立的である。それゆえ、社会教育主事の専門性を高めるためには、実現可能性の高い、たとえば社会教育主事の人事のローテーションを他の行政職員よりも長期化すること、研修の保障と研修機会の拡充など研修制度を見直すこと、などと早急に取り組む必要があろう。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。
<トップページへ戻る
 
       
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved.